事例にみる「逆算式」不動産投資法…それぞれのリスクの取り方

近年、すっかり身近になった不動産投資だが、一方で失敗の事例も後を絶たない。その原因を突き詰めると、結局は目先の利益ばかりを見て「自分の取れるリスクがどれくらいか」を把握していなかったことにある。本連載では、不動産投資による資産形成のサポートに強みを持つルーフトップリアルティー株式会社代表取締役の若生和之氏に、リスクの許容度から考えるという、本来あるべき不動産投資法について伺った。後編では、実際に若生氏が提案した不動産投資の事例を見ていこう。

リスクの許容度は人によって異なる

前回の記事(関連記事『不動産投資を成功へと導く「リスクからの逆算」という視点』)で、今後、不動産投資で重要になるのは、投資目的と自身で許容できるリスクを明確にしたうえで、物件を選ぶ「目利き力」を持ち「経営的な視点」で投資を行うことであり、さらにアドバイスができる不動産業者とパートナーシップを結ぶことが、不動産投資の専業ではない一般の投資家にとって確実である、という説明をしました。

 

今回は、実際に弊社で提案を行った方々が、どのような目的を持ち、どのようにリスクを考え、それに対して弊社がどのような提案やアドバイスを行ったのか、3つの事例を通して紹介していきます。

 

※プライバシー保護のため、情報の細部は実際とは変えています。

 

【事例1】安定的なキャッシュフローと相続対策を実現したいA様の場合

A様は、外資系企業にお勤めの60代の男性。年収は3,000万円ほどで、2億円ほどの金融資産をお持ちである一方、不動産資産は一切ありませんでした。リタイア後を考えて、不動産投資により安定的な家賃収入を得たいとする一方で、購入する物件は今後の相続を見据えて、資産価値が落ちにくい好立地のものを希望していました。

 

■提案内容

まずA様の奥様とご子息を役員に入れた不動産管理法人の設立を提案しました。また安定的なキャシュフロー(=老後対策)と好立地の物件(=相続対策)を望んでいましたが、1つの物件で両方を満たすことは難しく、地方都市の高利回り物件と、東京都心部の好立地で資産性の高い物件を組み合わせて、法人で保有するポートフォリオを提案しました。

 

■提案物件、および現況

仙台市内の2億円規模のマンション(1棟)

利回り11%超であり、融資もセットして潤沢なキャッシュフローの確保を目指したものです。

 

東京都渋谷区の3億円規模のマンション(1棟)

建物は築30年ながら渋谷区の人気駅近くの立地で、敷地面積も広く、資産価値が高い物件です。住戸はファミリータイプですが、家賃設定を比較的抑え目にして、高稼働率を狙いました。これは、仙台の物件での空室リスクを考えて、リスクヘッジとするためです。結果的に両物件とも高稼働率で、安定経営が続いています。

 

地元業者とのネットワークも活かし、安定的な家賃収入を狙える物件を購入※写真はイメージ
仙台を地盤とする業者とのネットワークを活かし、安定的な家賃収入を狙える物件を購入した。※写真はイメージ

 

【事例2】リスクを取って高利回りを狙うB様の場合

40代のB様は、いわゆる「専業大家さん」で、すでに11棟の不動産を所有。年間約1億円の不動産収入があり、金融資産も約1億5,000万円ほどありました。専業大家であるため、高利回りを狙いたいと考えていました。

 

■提案内容

B様の場合、(1)不動産の経営経験が豊富で専業の大家業をしている (2)1.5億円の金融資産を持っている、との状況から、一定のリスクに耐えうる背景があると判断し、弊社で多数の運営実績があり、高利回り物件が多い東海エリアでの物件を提案しました。

 

■提案物件、および現況

岐阜県の1億円規模のマンション(1棟)

旧耐震の築古物件ながら、利回りは20%超を取れる高利回り物件です。某大学から至近の立地であることに加え、敷地面積が広く、さらに駐車場も確保しています。そのため、学生だけに頼らず、若い単身会社員層もターゲットにすることで空室リスクを低減できると判断しました。直近の学生の入れ替えシーズン後も、無事に満室運営を継続しています。

 

賃貸ニーズを把握し、安定経営を実現※写真はイメージ
周辺の賃貸ニーズを把握し、安定経営を実現。※写真はイメージ

物件の入れ替えでキャッシュフローを改善

【事例3】保有物件の収支を改善したいC様の場合

上場企業の部長職だったC様は、年収が約1,500万円、金融資産は約5,000万円ほどありました。すでに2棟の不動産を所有していましたが、1棟の収支は芳しくないという状況。資金対策や改築、あるいは売却も視野に入れて対策を考えたい、売却をする場合は物件の入れ替えも検討したいが、同時に返済額も減らしたい、と相談がありました。

 

■提案内容

当該物件について、まず融資の借り換えで金利負担やキャッシュアウトを減らせないかを検討しましたが、物件評価や築年数を考えると断念せざるをえませんでした。次に、プロパティマネジメント会社やビルメンテナンス会社からの業務、請求内容を調査したところ、削減できることがわかりました。一方、当該物件の売却と新規物件の購入による資産の入れ替えをシミュレーションしたところ、後者のほうが将来キャッシュフローの増加が見込めると判断しました。

 

■提案物件、および現況

神奈川県の1億円規模の築浅マンション(1棟)

既存物件の売却は、弊社のネットワークを活用してタイミングよく買主とマッチングができ、残債割れとなることもなく、多少の利益を残して売却できました。

 

また、同時並行で進めた新規物件の購入では、返済額の減額を重視し、金融機関の積算評価が高く、低利の融資を受けられる築浅物件を提案しました。築浅であるため、利回りは9%とそれほど高くありませんが、積算評価が高く、前物件のときより低金利の融資を受けられました。結果、物件を築浅のものに入れ替えながら、収支を改善することができました。

 

 まとめ 

以上、3つの事例を紹介しました。実際には、ここには書かれていないさまざまな要素も検討しており、上記は紹介できる範囲の概略だけを述べています。それでも「目利き力」や「経営的な視点」、「リスクから逆算していく視点」がどのようなものなのか、イメージできたのではないでしょうか。

 

前回お話ししたとおり、今後これらが不動産投資において重要視されるポイントであるとはいえ、一般の投資家がすべて持ち合わせるのは難しいことです。ぜひ、信頼できる不動産業者をビジネスパートナーとして選び、確かな不動産投資を行ってください。

 

ルーフトップリアルティー株式会社 代表取締役

1982年生まれ。宮城県出身。
2005年に1棟収益不動産専門会社に入社。
当時、収益不動産に特化した会社は希少で、数多くの案件に携わりノウハウを蓄積。
その後、同じく収益不動産専門会社役員を経て、2015年ルーフトップリアルティー株式会社設立。
自信も複数の物件を保有する投資家として、同じ目線に立ち、多くの顧客を成功へと導いている。

著者紹介

連載リスク許容度から考える「逆算式」不動産投資法

取材・文/椎原よしき 撮影/有本真大(人物)
※本インタビューは、2019年4月18日に収録したものです。