任意組合型「共同出資型不動産」の事業スキームとは?
前回触れた「争族」を避ける解決策のひとつとなりそうな「共同出資型不動産」というスキームだが、これは不動産特定共同事業法(不特法)により規定されている。いかにも難しそうな名称だが、要は「小口化」だと考えればいい。多くの人が少しずつ出資、不動産を購入、管理し、その不動産から得られた収益を出資に応じて分配する仕組みだ。
例えば、10億円の物件を一個人が手軽に購入することはなかなかできない。買える人は限られ、売買(市場)も滞るだろう。しかし、これを一口1000万円ずつ100口に分けて売り出せば、購入できる人は格段に増える。これは不動産の売買の活性化につながる一面もある。
いま日本全国を見回すと、多くの不動産が活用されないまま放置されている状況がある。国(国土交通省)としては、どうにかしてそれらの活用を促したい。その思惑から、不動産の売買を活性化させるために不動産特定共同事業法の改正を重ね、利用の間口を広げてきたという経緯がある。
[図表1] 「共同出資型不動産」のイメージ
「共同出資型不動産」には、匿名組合型、任意組合型などのタイプがあり、事業の目的(=投資家の目的)に応じて使い分けられている。
今回取り上げるコスモスイニシアの共同出資型不動産(セレサージュシリーズ)は任意組合型である。
「任意組合型のポイントは、投資家の皆さまが購入するものが実物不動産の共有持分であるため、適用される税制も実物不動産と同様である点です」(北島祐二氏)。
そのために、前回説明した相続時における資産評価額の圧縮効果など、不動産所有のメリットが期待できる仕組みになっている。
では、具体的なスキームを見てみよう。
まず、コスモスイニシアが本スキームに適した、収益性も物件価値も長期間安定推移することが見込まれる都心の超一等地にある優良不動産を取得する。投資家は同社から、口単位で共有持分を購入する(ちなみに、セレサージュ表参道は一口500万円で、二口以上から購入可能)。
「たまに勘違いされる方がいらっしゃいますが、あくまで投資家の方が不動産を所有するのであり、私どもにお金を預けていただくということではありません」(北島祐二氏)という点は、しっかり理解しておこう。
[図表2] 一般不動産と「共同出資型不動産」の違い
「出資者と物件運営者が別」であるというメリット
次に、購入した不動産を賃貸物件として運営しなければならない。そのために、まず民法上の任意組合という組織を作り、投資家はその組合に自分の所有している持分を現物出資する。ここがややわかりにくいところだが、要は、企業を設立して資本金を出資する形に近い。その出資する「箱」が、企業ではなく、任意組合という組織になると考えればいい。
では、その組合をだれが運営するのか。つまり会社でいえばだれが「経営者」になるのかという点だが、不動産特定共同法の事業者であるコスモスイニシアが理事長となり、賃貸運営と建物管理を行うことになる。
「株式会社に出資した株主が会社経営をしなくていいように、セレサージュの物件に投資いただいた投資家の方々は不動産を運営・管理する必要はありません。コスモスイニシアと関連の管理会社が運営・管理を行います。そして、賃料などの収入から管理費、修繕積立金などの費用を差し引いた収益が「分配金」として、年に2回投資家の方々に支払われます」と山内崚汰氏は語る。
ちなみに、固定資産税も理事長(コスモスイニシア)がまとめて納付する形になっているため、所有期間中に投資家が取る手間といえば、確定申告くらいのもの。その確定申告にしても、計算の基礎となる資料が作成、送付されてくるため、いちから自分でやる場合とは雲泥の差である。
口数単位で投資額を決められることに加え、この運営・管理をすべてプロに任せることができるというのも、共同出資型不動産の大きな魅力である(当然、管理費は物件の収益から支払われる)。
最後に、「共同出資型不動産」のリスクや、理解すべき点に触れておく。
まず当然だが、利回りが約束された金融商品ではないということ。不動産の共有持分の購入であるため、通常の不動産投資と同様に、物件価格の値下がり、空室による利回りの低下といったリスクはある。セレサージュシリーズに限って言えば、都心の超一等地に立地していることから、それらの可能性は極めて低いものと考えられるが決してゼロではない。
また、出資した持分には抵当権をつけることができない。つまり、担保にならないため、金融機関から融資を受けての購入ではなく、全額自己資金での購入が前提となる。
将来的にも、この物件を担保とした融資は受けられないので、もし出口(物件売却)の前に現金が必要になった場合は、出資持分(物件の所有権)を第三者に売却することになる。その際に、すぐに購入者が見つからない可能性は通常の不動産と同様に否定できない。また、いつでも市場で売却できるJ-REITなどと比べれば、流動性リスクは高めである(※なお、コスモスイニシア自身が出資持分を買い取ることはしていない)。
購入検討の際には、以上のようなリスクについても、十分に認識しておく必要がある。