富裕層を中心に、海外不動産への投資、とりわけアメリカ不動産への投資が人気だ。ただ、日本国内の金融機関は、海外不動産を担保にした融資を基本取り扱わないため、資金効率の面で海外不動産投資に二の足を踏む人は少なくない。しかし昨年12月、この「海外不動産を担保にした融資は日本で受けられない」という常識が覆った。西京銀行の「海外不動産担保ローン」の登場である。

海外不動産投資に立ちふさがる「高いハードル」

ここ数年、海外の不動産物件に投資する人が増えている。ひとくちに海外不動産といっても実際には多くの国が対象となっているが、人気が高いのはやはりアメリカだ。従来から人気の高いハワイのほか、近年ではロサンゼルス、テキサスなどでの不動産投資に関心を示す人も多い。

 

しかし、海外不動産投資は、原則的として日本国内の金融機関での融資担保にならない。つまり、国内金融機関でローンを組んで購入することができなかったのである。不動産投資は全額キャッシュで買える余力がある場合でも、融資の活用を検討するのが王道のひとつである。しかし、海外不動産投資の場合はこれが適わないわけで、実際の投資にあたっての高いハードルになっていた。

 

今回取り上げる「海外不動産担保ローン」は、その名のとおり、海外不動産を担保に融資が実行される画期的な商品だ。取り扱うのは西京銀行。株式会社日本保証が保証を担うことで、日本国内の金融機関として初めて導入に成功した。現状、アメリカ不動産の中でも、ハワイ不動産のみが対象となる(2018年7月9日現在、ハワイ州オアフ島、テキサス州、ネバダ州ラスベガス、カリフォルニア州が対象)。

 

商品詳細に触れる前に、なぜ近年、日本人富裕層の間でアメリカ不動産投資の人気が急上昇しているのか、その背景を整理しておきたい。なぜ国内不動産投資ではなく、わざわざアメリカ不動産を購入するのか。アメリカ不動産への投資には、日本での不動産投資にはない大きなメリットがいくつもあるからだ。

 

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(1)不動産市場全体の中長期的な展望

 

大きな背景として、日米の不動産市場における中長期間での展望の違いがあげられる。日本は今後、長期的に人口減少社会になることが確定的だ。人口が減るということは、家が足りなかった時代から、家が余る時代へ変わるということである。

 

希少性が高い大都市の中心エリアは別として、国内の多くのエリアにおいては、今後一層の選別投資が重要になる。キャピタルゲイン狙いはもとより、長期的なインカムゲインを狙った投資でさえも、厳しい選別眼を持たない限り、今後は難しくなっていくことが予想される。

 

一方、アメリカは、先進国の中でも数少ない人口増加国である。であれば、アメリカ国内の不動産価格は、今後も当面は緩やかな上昇基調を続けていく可能性がある。人口減=不動産価格下落、人口増=不動産価格上昇という傾向は、当たり前の話であるが、だからといって絶対に軽視はできない要素である。

 

(2)中古不動産市場の厚み

 

またアメリカでは、不動産市場の取引規模が日本とは比べものにならない厚みを持っている。概算で、日本の7~8倍程度の取引が行われ、しかも、その取引対象物件のうち8割近くが中古物件となっているのだ。

 

この背景としては人口の絶対数が違うこともあるが、日本のようにマイホームを一度購入したら一生住み続ける人が少ないということもある。さらには、中古物件だからといって、無条件で価値が割り引かれるということもなく、需要があれば、しっかり価値・価格が上がっていくという特徴がある。

「新築信仰」はアメリカには存在しない

(3)建物の価値の減価が少ない

 

アメリカでは一般に、日本のように極端に新築を好む、いわば「新築信仰」とも呼ぶべき性向が見受けられない。

 

アメリカでは、中古物件であってもメンテナンスがしっかりなされており、綺麗に使われている物件であれば、新築と遜色ない価値・価格で取り扱われる。日本の不動産の常識では信じ難いかもしれないが、新築物件と築20年の中古物件が並んで売られていたとき、同じ程度の広さで中古側が綺麗にリノベされていれば、ほとんど同じような値段で取引されているのだ。中古であっても建物価値に減価が生じにくいのである。

 

一方、日本では、どんなにお金をかけた建物でも、木造なら築25年も経てば価値はほとんど「ゼロ」とみなされるのが普通である。木造住宅の課税上の法定耐用年数が「22年」と定められていることが、それを端的に表している。

 

時間によって価値が大きく減る物件と、あまり減らない物件。どちらが投資対象として魅力的か、答えは言うまでもないだろう。

 

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(4)タックスプラニングの一環

 

このように、アメリカの不動産市場には、それ自体に投資対象としての魅力がある。しかし、ここ数年の「アメリカ不動産投資ブーム」は、それだけが理由ではない。

 

投資家にとって絶対に欠かすことができないタックスプランニング、つまり税の繰り延べといった視点から、アメリカ不動産を資産の一部に組み入れるケースが目立つのだ。この詳細については次回触れるが、実はこの税効果を膨らませるという点において、今回の「海外不動産担保ローン」は大きな力を発揮することになる。次回、合わせて見ていくことにしよう。

 

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取材・文/椎原芳貴
※本インタビューは、2018年1月11日に収録したものです。