今回は、費用を前払いしたのに建築を途中で放棄した、悪徳業者の事例を見ていきます。※本連載は、NPO法人ハウジングネットコンシェルジュの代表理事である佐々木孝氏の著書、『誰も教えてくれないマイホーム建築の罠』(太陽出版)の中から一部を抜粋し、住宅業界に横行する「悪習」を明らかにし、住宅を建設する側として押さえておきたい対処術をご紹介します。

「経営状態が悪いので、これ以上建築を続行できません」

<悪徳業者の事例 Aさんのケース>

 

悪徳業者は欠陥住宅を作っても、法律の抜け穴をよく知っているのでやっかいです。法律の抜け穴を利用した悪徳業者のやり口がよくわかる、実際に私たちが遭遇した事例を紹介しましょう。

 

仙台で家を建築中のAさんから相談が入りました。家の工事が途中で止まってしまったというのです。Aさんは、ツーバイフォーの輸入住宅を建てようと計画し、地元の小さいビルダーに依頼をしたそうです。

※ビルダーとは、地域に密着した比較的小規模な業者のことです。

 

Aさんは、その会社の社長でもあるP氏の勧めに強い熱意を感じて信用したそうです。そして、P氏から「材料を輸入する」という名目で多額の金銭の前払いを要求されたのですが、信用していたため疑うことなく支払ってしまいました。

 

それからしばらくして家の建築が始まり、基礎ができて骨組みができた頃、Aさんは職人さんから耳を疑うような話を聞かされます。

 

なんとP氏から工費が振り込まれておらず、怒りの矛先がAさんに向けられたのです。ついに収入の目処(めど)がたたなくなった職人さんは、続行困難と判断して仕事を放棄してしまったのです。

 

驚いたAさんがP氏に詰め寄ると、「お金がなくなってしまいました。経営状態が悪いので、これ以上家の建築を続行することができません」と平然と言ってのけたのです。

悪質なケースでも「詐欺罪」で告訴するのは難しい

私は「これは計画的な犯行だ」と確信していました。なぜなら、P氏のトラブルはこれが最初ではなかったからです。すでに何人ものひとから同じ被害の相談を受けていたのです。

 

そこで、東京の某テレビ局と一緒に取材を開始しました。テレビ局はそのネットワークを駆使して、さらに多くの被害者がいることを把握しました。また警察にも被害者が相談をしていて、ついにP氏は逮捕されたのです。この事件は新聞にも載りました。

 

ところが、P氏はわずかな罰金で釈放されてしまったのです。P氏に課せられた罪は、実際には所持していない建設業の番号を、嘘をついて掲示したというものだけです。Aさん以外にもたくさんの人たちをだましているにもかかわらず、詐欺罪では告訴はされませんでした。

 

私は強い憤りを覚えました。と同時に、これほど悪質なケースでも詐欺罪に問うことは非常に難しいことなのだということを知ったのです。

 

このように悪質なケースでも詐欺罪に問うことが難しいと知っている悪徳業者は、法律の隙間をうまく突いてきます。たとえ10円でも盗んだら泥棒なのに、何億もの大金をだまし取っても裁かれないのが現実なのです。

 

ちなみに、このP氏はまだ住宅業界で生き残っています。今でもだまされている人がいるかと思うと、心配でたまりません。

 

これから小規模工務店で家を建てるひとは、特に念入りに工務店の経営状態を確認することが必須の条件です。実績がまったくないところや、数軒しか建てた経験がないところで安易に契約すべきはありません。

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