今回は、不動産業界で横行する、悪徳業者による法律の抜け穴の利用について見ていきます。※本連載は、NPO法人ハウジングネットコンシェルジュの代表理事である佐々木孝氏の著書、『誰も教えてくれないマイホーム建築の罠』(太陽出版)の中から一部を抜粋し、住宅業界に横行する「悪習」を明らかにし、住宅を建設する側として押さえておきたい対処術をご紹介します。

工事の放棄や欠陥住宅の建設を処罰する法律は?

前回に引き続き、悪徳業者でも処罰されない法律の抜け穴を見ていきます。

 

さらに驚くべきことに、この建築業法第20条には罰則規定がないのです! したがって、住宅メーカーは工事の種別ごとに材料費、労務費その他の経費の内訳を明らかにしなくても、罪に問われることはありません。

 

住宅建築にはこうした法律の抜け穴がこのほかにもたくさんあるので、業者はやりたい放題となっているのです。そして悪徳業者は、法律で罰せられないギリギリのところをよく知っています。「大手メーカーだから安心」などと考えている顧客をだますことなど朝飯前です。

 

さて、ここであなたにひとつ質問があります。あなたは以下のケースで刑事罰を受けるのはどれだと思いますか?

 

1.1週間何も食べられずに空腹に耐えかね、コンビニで100円のおにぎりを万引きしたホームレス。

 

2.3000万円の住宅を契約し、前払いでお金を受け取ったにもかかわらず「経営状態が悪くなりました」と言って家の工事を放棄した建築業者。その後も同じことを十数回繰り返したために、たくさんの被害者が出た。

 

3.何千万円もの価格で家を受注するものの、ひどい工事で欠陥住宅を作り、修理をしなかった会社。

 

心情的にいえば、2番と3番が刑事罰を受けてもおかしくない、と思われるでしょう。しかし、確実に刑事罰が下されるのは1番のホームレスだけです。なぜなら、窃盗罪があるからです。

 

2番と3番は実際に私たちが遭遇した実話ですが、彼らは罰せられることなく、今でも建築業界に残っています。2番の事例は詐欺罪に当てはまるかどうか、ギリギリのラインなのだそうです。この件では3000万円もの大金が返ってくることもなく、しかも法律でも守られず、相談に来られたひとも私たちも、本当に悔しい思いをしました。

 

このような場合でも、住宅建築には罰則がないために何千万円もの被害を与えても住宅メーカーが処罰されないのが現状です。

訴訟で大手住宅メーカーに太刀打ちするのは難しい

<事例にみる法律の抜け穴を利用した悪徳業者のやり口>

2005年に千葉県で営業していた建築設計事務所の姉歯秀次(あねはひでつぐ)一級建築士が、地震などに対する安全性の計算を記した構造計算書を偽造していた事件を覚えていらっしゃいますか?

 

この事件は耐震偽装問題や姉歯事件と呼ばれ、世間を揺るがせたため処罰されたひとが出ましたが、それ以外で欠陥住宅を作って逮捕された例を聞いたことはありますか? きっとないはずです。みんな、法律の抜け穴をくぐり抜けてしまうのです。

 

民事訴訟を起こすひともあまりいません。なぜなら、家を建てたばかりで、裁判にお金を回すのは容易ではないからです。特に家の金額をつり上げられた場合はなおさらです。

 

大手住宅メーカーなどは自社が1審で負けると上告し、最高裁まで戦い抜きます。一般人では、それに対抗するための資金を調達することは難しいことでしょう。また、訴訟相手が中小の会社の場合、たとえ裁判に勝っても「会社に支払うための資金がない」と開き直られるとなすすべがありません。

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