投資信託選びで注意したい「新規」の設定ファンド

今回は、投資信託選びで注意したい「新規」の設定ファンドについて見ていきます。※本連載では、毎年1000を超えるファンドを分析する投信評価会社に所属する「投信のプロ」が、投資信託の基礎知識を世界一わかりやすく解説します。

新規設定ファンドの運用成果は「未知数」

みなさんは、まだ誰も食べたことがない料理を目の前に出されて「美味しいですよ~! どうぞ召し上がってください!」といわれたら、どうしますか? 料理を出した人ですら食べたことがないのですから、本来は「きっと美味しいはずですけど…」くらいが正しい表現かもしれませんね。

 

実は、投資信託の新規設定ファンドは、このような状況で提供される料理のようなものです。それでも料理なら、お店や料理人をみることで、信頼できるものなのか、値段にみあった料理なのかについて、おおよその見当がつきます。このお店であれば味に間違いはない、この料理人は経験豊富だから大丈夫・・・というふうに判断することができます。それは、料理も含め、私たちが身の回りで接しているものは、一定の安定した品質が提供されることがわかっているからです。

 

一方で、運用は料理よりも不確実です。色も形もない投資信託だと、見分けることも判断することも簡単ではありません。しかも、料理のように一回千円程度の支出ではなく、大切なお金をたくさん託すわけですから、普通に考えれば不安ですよね。ものすごく慎重になるはずです。

 

でも実際に日本では、誰も食べたことのない新規設定のファンドが毎年数百本も新たに作られて、1兆円を超える大きなお金を集めているのです。

 

【図表】新規設定ファンドの設定金額と本数

誰も食べたことのないファンドは、なにがいけないのでしょう? それは、そのファンドが目指している運用が、その通りに行われるかどうかを確認できないから注意が必要なのです。

 

綺麗に作られた料理のディスプレイがあっても、見た目通りの料理、想像していた通りの美味しい料理が実際に提供されるとは限りませんよね。これを運用に置き換えてみると、大手の運用会社(お店)による、経験豊富な運用者(料理人)であれば信頼がおけるのですが、それが必ずしも良い運用成果を安定的に提供してくれる保証はない、ということになります。

 

ここに投資信託を選ぶ難しさがあります。上手に運用されるのか? 想定外に大きく下落するようなことはないのか? 実際にみてみなければ確認できない部分も大きいのです。

米国の投資アドバイザーはファンドの運用実績を重視

米国では、個人の資産形成を手助けする独立系の投資アドバイザーが社会に根付いています。日本ではまだこういったサービスを受ける人は一握りですが、米国では、彼らは医者や会計士よりも信頼されているという調査結果もあるようです。

 

この投資アドバイザーは、顧客の資産残高からフィー収入を得ることから、顧客の資産が健全に成長することに重きを置きます。その彼らが顧客のためにファンドを選ぶ際には、運用実績が3年以上あるファンドのなかから選ぶそうです。その理由は、今まで見てきた通りです。運用実績のないファンドよりも実績があるファンドのほうが、しっかりとした運用がなされているのかを確認できるからです。

 

このように、よほど魅力的であり自分が納得できるものでない限り、新規設定ファンドには慎重になるべきです。

 

ただ、こういった新規設定ファンドのなかでも、どのような運用が行われるのかを事前にある程度、想定できるものがあります。その代表例は「インデックスファンド」です。このタイプは、市場の動きと同じ運用を目指すことから、市場を代表する指数をベンチマークとして設定しています。

 

ベンチマークとは、その投資信託が運用の「目安」としている指数のことです。たとえば、日本株式に投資するファンドであれば、トピックス(東証一部株価指数)とか日経225株価指数などがベンチマークとされていて、その指数と同じ動きを目指すので、新規設定ファンドでもどういった運用実績になりそうなのか、あらかじめ想定できます。どういう料理が出されるのか、事前にレシピがわかっているようなものです。

 

もう1つは、ベンチマークが定められている「アクティブファンド」です。この場合も同様に、どういった運用をめざすのか(どのような料理ができあがるのか)を想定できるので、投資したのちに「いったいどうなっているの?」となる可能性は低いはずです。新規設定ファンドでも、これらのタイプは、決まった手順で料理が作られるレシピがオープンにされているので、安心感はあります。

 

最近はこういった運用の指標となるベンチマークが定められていないものや、複雑な仕組みのファンドが多いです。たとえば、航海に出るときに、目指すべき到達先がはっきりしない、目標とする方向を確認する羅針盤も持たない船に乗るのは怖いですよね。「とりあえず北北東に向かいます」と船長にいわれても、気が気ではないはずです。

 

こういったファンドでも、ある程度の運用実績があれば、言った通りにしっかりとした運用がなされているのかどうか確認できるのですが、新規設定ファンドではそれはできません。だからこそ慎重になるべきなのです。

 

食べたことのない料理を食べるときには、事前に慎重に吟味しましょう。

三菱アセット・ブレインズ株式会社 シニアコンサルタント

慶応義塾大学卒、唐木研究会出身。三菱UFJ信託銀行において、投資の専門家として20代前半から数十年にわたり、ファンドマネージャー、トレーダーとして一貫して運用の最前線に身を置き、市場のなんたるかを体得。その経験をもって、現在は、投資信託の評価会社である三菱アセット・ブレインズ(MAB)において、投資信託の販売支援や投資教育などを通じ、個人が安心して健全な資産形成に励むことができるための啓蒙に取り組んでいる。
書籍『顧客をリスクから守る資産形成術』(きんざい)を始め、資産形成に関する記事を新聞、雑誌に多数掲載。

三菱アセット・ブレインズ株式会社(MAB)
http://www.mab.jp/

著者紹介

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