今回は、運用実績をもとに「高配当を謳ったファンド」の特徴を見ていきます。※本連載では、毎年1000を超えるファンドを分析する投信評価会社に所属する「投信のプロ」が、投資信託の基礎知識を世界一わかりやすく解説します。

近年は高い配当利回りが期待されるREITも人気

組み入れ対象に特徴のある投資信託の注意点について、これまでもテーマ型ファンド(第15回投稿記事)、ハイブリッド証券を組み入れた高金利型ファンド(第16回投稿記事)などで確認してきました。今回は、外国株式ファンドを中心に広く人気のある高配当を謳ったファンドについて、運用実績からその特徴を見ていきます。

 

外国株式ファンドの投資対象を大別すると、幅広い銘柄を対象とするスタンダードな一般タイプとともに、AIや医療などの投資テーマを絞ったタイプ、高配当に着目したタイプが目立ちます。外国株式(先進国)ファンド全体のなかで「配当」「インカム」の名前がついたファンドの純資産残高は2兆円を上回り、約4割を占めます(図表1参照)。

 

[図表1]外国株式ファンドの運用タイプ別構成割合(残高ベース)

長らく超低金利が続くなか、投資信託市場では、高い金利を求める商品ニーズが続いてきました。古くは「グロソブ」と呼ばれる外国債券の毎月分配型ファンドが人気を博し、その後は、世界的に債券の金利水準が低下するなかで、新興国債券、ハイイールド債券、通貨選択型の投資信託など、リスクを高めながらも一定の金利水準を確保する投資信託が提供されてきました。金融機関の劣後債などのハイブリッド証券を組み入れたファンドもこの流れに属します。また、ここ数年では、債券ではないけれど高い配当利回りが期待されるREITも大人気でした。

 

近年では、債券金利よりも株式市場の配当利回りが高いという逆転現象が多くの国や地域においてみられるなか、利回りを求める投資家が多いことを意識して、高い配当を連想させる名前の株式ファンドが数多く設定されています。毎月分配型ファンドにおける分配原資を生み出し易いことも投信の販売政策とマッチしたものと思われます。

 

特に最近では、債券やREITを組み入れたファンドの分配金引き下げが相次ぎました。また、トランプ大統領の唱える政策が金利上昇懸念からREITへの投資が転機を迎えつつあるなかで、そういったお金の受け皿の1つとして、高配当を謳った株式ファンドは注目されています。

運用実績はアクティブ型ファンドを下回る!?

しかしながら、これらのファンドは、配当も含め価格上昇分も加味したトータルのリターンでみると十分な投資成果が得られているとはいえません。三菱アセット・ブレインズの調べによると、2016年9月末時点で10年以上の運用実績があるファンドの過去10年間のリターンは、一般的なアクティブ型ファンドのリターンを大きく下回っています(図表2参照)。

 

[図表2]配当、インカム名のトータルリターン(過去10年間)

 

一般的には、高配当は公益企業など成長性が低い企業や業種に多く、オーストラリアなど特定国においては、金融機関など特定業種の構成割合が高くなる傾向があります。公益企業を取り巻く環境も規制緩和によって従来とは様変わりしており、必ずしも業績が安定しているとは限りません。

 

高い配当を求めることにより、株式本来の成長性を獲得し損ねている場合もあります。買い物をする際に、商品についている魅力的なおまけに釣られてつい買ってしまうこともあるかと思いますが、長期投資を考えるのであれば、配当ばかりに気を取られずに、トータルのリターン(収益性)を重視しましょう。

 

もちろん、個々のファンドの運用は同じではなく、公益株中心のファンドもあれば配当の成長性に着目したファンドもあり、一括りに語ることはできないのですが、投資において、いいとこ取りはできないことを心得ておくとともに、こういったファンドを選ぶ際には、中身と運用実績をしっかりと確認することが大切です。

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