老後の生活を支える公的年金。1円でも多くもらいたい、というのが多くの人の本音です。そんななか年金受給額が見込額よりも少なかった……というケースは珍しくありません。年金減額、よくある原因を紐解いていきましょう。
月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「年金減額理由」のなかには自身で防ぐことができるものもある

ーー平均的な夫婦で月22万円かあ

 

平均的な給与をもらってきたから自分もそれくらいかな、と悠長に構えていると、実際に年金をもらう年齢になり「あれっ、思っていたよりも年金が少ない……」ということも。年金のルールをしっかりと知らないとリカバリーもできずに「何かの間違えでは!」と後悔することになりかねません。そのためにも「ねんきん定期便」はしっかりと確認しておくべきですし、年金の基本的ルールくらいは知っておいたほうがいいでしょう。

 

年金が減額となる理由として、主なものを5つ、みていきます。

 

①国民年金保険料の免除・猶予制度を利用したが…

所得の減少などで国民年金保険料の支払いが厳しくなり、「保険料免除制度」や「保険料納付猶予制度」を利用した場合、支払う保険料の総額が減るので、当然、将来受け取れる年金額は減少します。

 

免除の種類は「全額」、「4分の3」、「半額」、「4分の1」の4種類で、年金額はそれぞれ、保険料を全額納付した場合の年金額の「2分の1」、「8分の5」、「8分の6」、「8分の7」となります。

 

②学生納付特例制度を利用したが…

前述の通り、国民年金保険料には猶予制度がありますが、「学生納付特例制度」も同じく、収入がない学生のための納付猶予制度。あくまでも猶予なので、あとで追納をしなければ総納付額は満額ではないので、その分、年金は減額となります。制度名に「猶予」という言葉が入っていないせいか、「学生は特別に国民年金保険料を払ったことになる制度」などと勘違いしている人が多いといいます。

 

③国民年金保険料の未納期間がある

たとえば会社を辞めた場合。次の会社で働くようになるまでに少々間があると、国民年金保険料が未納になりがち。たとえ1ヵ月であっても、給与から天引きされていない間は、自身で保険料を払わないといけません。払っていない期間があれば、当然、将来の年金額に影響を与えます。

 

④定年後も給与をもらい過ぎて…

60歳以降に厚生年金保険に加入しながら受ける老齢厚生年金を「在職老齢年金」といいますが、その年金月額と総報酬月額相当額が48万円以下であれば年金は全額支給となり、そうでない場合は一部、または全額支給停止となります。

 

*(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12

 

在職老齢年金による調整後の年金支給月額は「基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-48万円)÷2」で計算できます。

 

⑤そもそも20年後の年金額は…

現行の公的年金制度は2004年の年金制度改革で、年金の給付水準を調整する「マクロ経済スライド」が導入され、年金給付額の伸びが抑えられるようになりました。さらに2016年の年金改革法により、2021年4月からは名目手取り変動率がマイナスになり物価変動率を下回る場合、年金額には名目手取り変動率が用いられるようになりました。それにより、直近では、2021年度と2022年度の2年連続で年金額は減少しました。物価が上昇せず賃金水準も上がらないままだと、年金の給付水準は下がってしまうのです。

 

また公的年金財政の定期健康診断のようなものである「財政検証」では、年金を受け取り始める65歳における年金額が現役世代の賞与込みの手取り収入額と比較してどのくらいの割合かを示す「所得代替率」は、経済成長と労働参加が進む場合で2割程度の低下としています。これは年金が現在の水準の2割、目減りすることを意味します。もちろん賃金が上昇すれば、年金額も増える可能性がありますが、年金2割目減りは現実路線というのが専門家の大方の見方です。

 

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①〜③は、国民年金保険料の支払いや手続きの不備、④は自身の働き方、⑤は社会情勢が年金減額の理由です。⑤は自身でどうすることもできませんが、①~④については対策を講じることができます。特に①~③は保険料の追納や任意加入によって、満額受給に近づけることが可能です。