(写真はイメージです/PIXTA)

2022年、中国における社会保障に関する経費は年間およそ6兆元(120兆円)に達し、習近平政権以降の10年間で3倍に膨張しているといいます。本稿では、ニッセイ基礎研究所の片山ゆき氏が、地方財政や分税制という視点から中国の社会保障の現状を解説します。

10年間で社会保障費が3倍になったワケ

中国財政部の決算発表によると、2022年、中国の社会保障に関する経費(社会保障関係費)は前年比11.7%増の5.9兆元(120兆円)となった。社会保障関係費は一貫して増加しており、習近平政権以降10年間で3倍の規模まで膨れ上がっている(図表1)。

 

中国では社会保障関係費について明確な定めがないため、本稿では年金・失業・労災・就業・生活保障など社会保障関連の多くの経費を含む「社会保障就業費」(3.7兆元)、医療・衛生事業などの経費を中心とした「衛生健康費」(2.2兆元)を合計したものとし、その姿を概観する(※1)。

 

出所:財政部決算より作成
[図表1]社会保障関係費の推移 出所:財政部決算より作成

 

図表1より、これまでも社会保障関係費が一貫して増加していることがわかる。しかし、前の胡錦涛政権下と現在の習近平政権下に分けてその状況をみると、増加の背景は異なると考えられる。

 

胡錦涛政権では経済の高度成長の下、拡大した諸格差を是正するために社会保険制度の創設や給付拡充を積極的に実施した。つまり、限られた国民を対象とする選別主義から、すべての国民を対象とする普遍主義への移行に伴う積極的な経費の増加といえる。それに伴って、社会保障関係費は前年比20%を超えるほど増加した。

 

一方、それを引き継いだ習近平政権以降は制度の統合、新たな制度(介護保険)の試行発表などにとどまり、大型の財政支出を伴う積極的な動きは見られない。経済成長の鈍化、財政赤字の拡大のなかで、現行の制度を維持するだけでも経費がかさみ、それ以外での積極的な財政投入は控えられる傾向にある。

 

2020年は新型コロナウイルス禍によって経費が増加したが、全体的には少子高齢化の更なる進展によって医療・年金を中心に経費が増加している点がうかがえる。

 

※1:なお、住宅購入補助なども社会保障の1つとされているが、別の費目で計上されており、ここでは含めていない。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年10月17日に公開したレポートを転載したものです。

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