(写真はイメージです/PIXTA)

2022年、中国における社会保障に関する経費は年間およそ6兆元(120兆円)に達し、習近平政権以降の10年間で3倍に膨張しているといいます。本稿では、ニッセイ基礎研究所の片山ゆき氏が、地方財政や分税制という視点から中国の社会保障の現状を解説します。

新型コロナ以降、雇用が不安定化した中国

直近の2022年の「社会保障就業費」、「衛生健康費」の内訳を振り返ってみよう。社会保障就業費をみると、公的年金関連の支出が全体(3.7兆元)の65.1%と最も多くを占めている(図表2)。

 

出所:財政部決算資料より作成
[図表2]社会保障就業費の内訳 出所:財政部決算資料より作成

 

また、前年度からの増加率が高い項目をみると、生活保護事業、就業補助、社会福利、特別貧困救助などが挙げられ、新型コロナ以降続く雇用の不安定化、生活保護や貧困対策と関連する費用が増加していることがわかる。

 

衛生健康費をみると、新型コロナ関連の公共衛生事業(疾病予防コントロール関連)が全体の28.5%、公的医療保険基金への支出が28.4%を占めている(図表3)。

 

出所:財政部決算資料より作成
[図表3]衛生研公費の内訳 出所:財政部決算資料より作成

 

特に、公共衛生事業は前年比79.0%増と大幅に増加している。さらにその内訳をみると、突発性公共衛生事件応急処理、重大公共衛生サービスといずれも新型コロナ関連の費用、サービス費用に多くが拠出されており、2022年も新型コロナ対策に引き続き経費がかかった点が見えてくる。

 

一方、2022年の一般会計支出額は26兆552億元で、そのうち社会保障就業費は14.1%を占め、衛生健康費は8.6%を占めている。両者を合計した社会保障関係費は全体の22.7%となり、最大の支出となっている(図表4)。

 

注1:上位9項目を抽出。 注2:社会保障関係費は社会保障就業費と衛生研公費の合計 出所:財政部決算資料より作成
[図表4]一般会計の支出構造の推移 注1:上位9項目を抽出。
注2:社会保障関係費は社会保障就業費と衛生健康費の合計
出所:財政部決算資料より作成

 

また、教育、農業・林業・水産業、一般公共サービスなどその他の費目が経費の支出を縮小する一方、社会保障関係費は一貫して増加している。また、社会保障関係費は前年比の増加幅、経費の規模も大きいため、一般会計支出に与えるインパクトは大きい(図表5)。

 

注1:上位
[図表5]費目別の支出額と前年比増加率 注1:上位9項目を抽出。
注2:社会保障関係費は社会保障就業費と衛生健康費の合計
出所:財政部決算資料より作成

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年10月17日に公開したレポートを転載したものです。

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