転職とは、自分の「やりたいこと」を実現するための手段です。賞与が減った、嫌な上司が現れた、などの理由で急いで転職に踏み切ると、多くの場合キャリア形成はなかなか上手くいかないでしょう。本稿では、東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、転職の失敗を避けるために、すべてのビジネスパーソンが持っておくべき心構えについて解説します。
キャリア形成に失敗し続ける人が欠いている「転職=手段」という視点【転職のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「上司と合わない」は転職理由になり得るか?

先ほど上司と合わないことについての話をしましたが、これも転職に関して筆者に寄せられる相談事項のベスト5に入るものです。どうしても気の合わない人というのはいますから、その人物が上司として自分の重要な位置に現れると、絶望的な気分になることは仕方ありません。

 

もちろん、キャリアの棚卸しを行った結果、現在の職場では「やりたいこと」を実現できないことが明らかになっている場合に限りますが、気の合わない上司が着任したのをきっかけに、転職の可能性を探るのは大いにアリだといえます。

 

同業他社などは横のつながりがありますから、実績を挙げていれば、即戦力としての評価を得られる場合もあるでしょう。その場合、転職はとんとん拍子に進むこともあります。「災い転じて福と為す」といったところでしょうか。

 

ところで中途採用の転職というのは、配属後に上司となる人との面接が組まれている可能性が高いようです。とくに外資系企業では、その傾向が強くなります。ですから人間的な相性も含め、相思相愛になれさえすれば、気持ち良いオファーが出ることが多いのです。

 

したがって現在の職場で、上司との人間関係に悩んでいる人ほど、良い面接担当者=将来の上司に飛びつきたくなります。

 

しかし、問題は、次の職場でも同じことが繰り返される可能性があることです。

 

転職後に直属のボスとなる人との相性が良いと判断しても、転職した数年後にはその魅力的だった上司は栄転であなたのもとを去るかもしれません。あなたからみて魅力的な上司は他部署にとっても魅力的だからです。

 

そうなるとまた職場の人間関係が変化します。

 

10年などの単位で振り返ると、人間関係が発端で転職を繰り返すことで、キャリアの発展をロスしている人も多いものです。これなどは「やりたいこと」が不明瞭で軽はずみな転職を繰り返しながら、長期的に失敗を積み重ねている典型的なパターンといえるでしょう。

 

日本は先進国のなかでは雇用流動性が低いといわれるお国柄です。一方で欧米企業はこれと反対の立ち位置にあります。雇用流動性が高い場合は、雇う側と雇われる側の意思決定のスピードが非常に速い時間軸で流れます。いわばドライな関係にあるのです。

 

ですから短期的に「やりたいこと」が合わない場合は、雇用契約を解消してお互い次の環境に活路を求めます。これが一般的ですから、転職回数の多さなどが必ずしもネガティブな外部評価につながらないわけです。

 

一方で、雇用流動性が低い日本のような環境では、中長期でじっくり人材を育てたり、余裕を持って評価したり、そういうことが重視されやすい傾向があります。そのため、せっかちな理由に基づく転職や環境変化は、外部評価から見たときにネガティブに作用することが多いのです。

 

ですが、キャリア形成においては、他人の評価を気にする必要はありません。

 

現在の職場について、自分が「やりたいこと」を実現できる環境かどうかを見極めることがなによりも大切です。「転職は手段」というスタンスに立てているかどうか、そして正しく自分のキャリアを理解できているかどうか、これは1つの物差しになりますから、ぜひ参考にしてみてください。