前回は、減価償却費の計算方法を紹介しました。今回は、そもそも減価償却とは何か、その活用が本当に節税につながるのかどうかを見ていきます。

減価償却の方法は2種類

税金はすべて、帳簿上の数字で計算されます。そもそも減価償却とは何かというと、時間の経過とか使用によって価値が減少するものが、その年数ごとにどんどん帳簿上の価値が減少していくので、それを経費として引くことができるのです。

 

減価償却ができるのは建物だけで、土地は減価償却できません。土地は時間の経過で価値が減少するものではないからです。市況によって値段は下がる可能性はありますが、建物のように経年で劣化していくことはありません。

 

1000万円の物件で、帳簿上、土地が500万円、建物が500万円。この建物の500万円を、新築であれば、木造の場合は22年、RCの場合は47年かけて償却していき、最終的には建物の価値はゼロになります。したがって帳簿上、その不動産の価値は土地代だけの500万円になります。

 

減価償却には決まりがあり、固定資産税の減価償却の手法として、次の2種類の方法があります。

 

<減価償却の方法>

 

●定額法・・・固定資産の耐用期間中、毎期均等額の減価償却費を計上する方法

 

●定率法・・・固定資産の耐用期間中、毎期期首未償却残高に一定率を乗じた減価償却費を計上する方法(最初に多く落とせる)

 

参考までに一例をあげると、緑化設備が20年、電気設備、給排水衛生設備、ブロックフェンスなどのエクステリアは15年、駐車場整備はコンクリ・レンガ・ブロック・砂利が15年で、アスファルトが10年、エアコンなどの一般的な住宅設備は6年です。なお建物の解体費は経費にも償却資産にもなりません。

 

よく使われている節税手法というのは、木造の耐用年数22年を超えた物件を購入した場合、その建物に関しては耐用年数×0・2の4年で償却できますので、建物が500万円の場合、この500万円を4年で償却、つまり500万÷4で、単純には毎年125万円を経費枠として落とすことが可能です。個人で購入している場合は課税所得が低くなります。

減価償却によって「税負担」が大きくなる場合も!?

ところが、減価償却を使うとその分だけ簿価も減っていくので、売るときにプラスになるケースが多いのです。物件価格の売却価格が買ったときよりも安くなっていたとしても、簿価がそれよりももっと減ってしまうと、帳簿上の利益が出てしまいます。

 

そこに個人の場合だと、短期譲渡税と長期譲渡税というのがかかってきます。それが短い期間で売ると、その利益に対しての税金が39%かかるわけです。だから短期間でプラスで売ってしまうと、税負担も大きくなります。

 

短期譲渡税と長期譲渡税ぐらいまでは、理解はしている人は多いと思います。しかし、時が経ってくると、減価償却もどんどん使っていくわけですから、簿価もどんどん下がっていく。だから安くして売ったとしても、利益が出やすいということです。それを、例えば5年未満で売ると、そこにまた4割近くの税金がかかってくるわけです。

 

特に区分マンションなどはそもそも利益が薄いので、そういうことをしていると、薄い利益が持っていかれてしまうということです。それを考えていないというか、知らない人が非常に多いのです。

 

本当に9割以上の人が、一瞬しか見ていないのです。目先のところだけしか見てない。ちゃんと出口まで、最後まで見るということをしないと、本当の節税効果はわかりません。

 

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本連載は、2016年6月30日刊行の書籍『不動産投資の嘘』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

不動産投資の嘘

不動産投資の嘘

大村 昌慶

幻冬舎メディアコンサルティング

融資のこと、業者のこと、出口戦略のこと…不動産投資において知っておくべき情報は数多く存在する。 これから投資を行おうと思っている人、実際に投資を行っている人の多くは、本やセミナーから多くの情報を得る。しかし、そ…

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