今回は、ベトナム、ラオス、タイ、ミャンマーというインドシナの4つの国を繋ぐ「東西経済回廊」について見ていく。※本連載は、雑誌、書籍、ウェブなど幅広い媒体で活動するアジア専門ライター・室橋裕和氏の共著、『新視点がヒントになる アセアン経済回廊』(キョーハンブックス)の中から一部を抜粋し、「陸のアセアン」とも呼ばれるインドシナ諸国の最新事情を紹介します。

ベトナム、ラオス、タイ、ミャンマーを結ぶ大動脈

 

 

インドシナ半島を縦横に走るさまざまな経済回廊のうち、この東西経済回廊こそ日本が官民あげて開発に尽力してきたルートであり、2013年のタイ=ミャンマー国境の第3国人への開放をもって全線が開通した。しかしまだ「道路がつながった」ところであり、回廊が本格的に機能するにはまだ時間がかかりそうだ。最大の問題は、山岳地帯における道路インフラの貧弱さである。

 

しかしインドシナの4つの国に、道路が貫通した事実は大きい。日本企業の進出も始まっている。今後はメコン圏の物流の主役を担うことになるはずだ。

東西経済回廊基点として注目が集まる「ダナン

ダナンはベトナム第3の都市ながら、なんといっても「観光都市」である。世界遺産の遺跡がある街として知られるフエやホイアンへのゲートウェイであるばかりでなく、近郊にはビーチリゾートも擁する。その傍らで、ダナン・ハイテクパークなどいくつもの工業団地を建設しており、工業化も進めている。

 

ダナンでの操業は、現地調達はできない、市場も小さいという欠点がある。しかし一方で、カットライ港・ハイフォン港に次ぐ国内3位の取扱高をもつダナン港を利用できることと、ほかの地域より安い人件費が魅力である。したがって、安い人件費を生かし、原料はすべて輸入して製品はすべて輸出する、輸出加工型製造業にとって有利な地といえる。

 

従来、ベトナムに進出する日系企業は、それぞれ巨大な輸出港を持つ北部の首都ハノイか、南部の最大都市ホーチミンシティのどちらかを選ぶものだった。しかし東西経済回廊の基点として、ベトナム第3の都市であり港湾としての存在感が高まるにつれ、日系企業も増加。2015年時点で、ダナン日本商工会への加盟企業は100社に迫っている。ベトナム全体では1500社なので、まだ少数ではあるのだが、東西回廊の開発がさらに進めば、注目されていくだろう。

ロジスティックセンターとしてのサービス向上が課題

ダナン港は、観光都市だけあって貨物船より観光船が目立つ印象だ。ターミナルが2つあるが、大きい海側のバース(ティエンサ・ターミナル)は深さ10〜12メートル、バース幅1200メートル。もうひとつは河川のなかにあり小さい。

 

貨物は、木材チップ、石、縫製品が中心で、工業製品はまだ少ない。コンテナ用クレーンは2機だけで、コンテナ取扱量は2013年は16万TEU(本書籍『アセアン経済回廊』P28のアセアン内海運マップも参照)。これは全国のコンテナ取扱量の4%にしか満たない上に、高コストであることが指摘されている。だが2006年の約4万TEUに比べれば4倍ほどの伸びを示しており、ダナン港の将来性を感じさせる。

 

現状ではこの伸び率に耐えられず、また設備の老朽化も進んでいる。これに対応するため、2016年から、ロジスティックセンターとしてのサービスの質を上げる工事に取りかかる予定になっている。ティエンサ・ターミナルの整備と拡張は、日本が主導で行なわれる予定だ。

本連載は、2016年1月20日刊行の書籍『新視点がヒントになる アセアン経済回廊』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

新視点がヒントになる  アセアン経済回廊

新視点がヒントになる アセアン経済回廊

室橋 裕和

キョーハンブックス

地図とグラフで読み解くアジア新時代。アジアで働くビジネスマン必携の一冊! 2015年末に発足したアセアン経済共同(Asean Economic Community)。人とモノ、マネーの流れがより活発になり、注目を集めるアセアン地域を、地…

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