その他 エトセトラ
連載インドシナ経済回廊の現場を歩く【第7回】

インドシナ半島の新しい時代を担う「東西経済回廊」

AEC東西経済回廊

インドシナ半島の新しい時代を担う「東西経済回廊」

今回は、インドシナ半島の新しい時代を担う「東西経済回廊」について見ていく。※本連載は、雑誌、書籍、ウェブなど幅広い媒体で活動するアジア専門ライター・室橋裕和氏の共著、『新視点がヒントになる アセアン経済回廊』(キョーハンブックス)の中から一部を抜粋し、「陸のアセアン」とも呼ばれるインドシナ諸国の最新事情を紹介します。

自由になったミャンマーへの入国が国境を一気に開いた

東西経済回廊はいよいよ最後の国ミャンマーに到達する。ミャンマーに陸路で行き来できるようになったのは2013年のこと。それより以前は、4カ所の国境ポイントのみの、1日限定入国しかできなかったのだ。ミャンマー国内を旅するには、まず空路で入国する必要があった。

 

それが民主化の進展、AECを念頭に置いた回廊の整備もあり、長年閉じられていた国境が一気に開いた。4カ所の国境ポイントのうち3カ所がそのまま国際国境に格上げされ、第3国人でも通過ができるようになった。

 

北からタチレク/メーサイ、ミャワディ/メーソート、そして、船で15分ほどの港同士である、コータウンとラノーンだ。加えて、新しい港と経済特区の開発が予定され、日本政府も力を入れているという街・ダウェイに向かうティーキー/スナロン国境が新設された。

タイの支援で造成された新しいバイパス道路

なかでも、もっとも注目を集めているのがミャワディ/メーソートの国境だろう。東西経済回廊はここを通過する。このエリアの通行に長く立ちはだかってきたのが、少数民族武装勢力と、一部区間の悪路だった。しかし、2015年10月には、カレン族の武装勢力と政府の間に停戦合意が結ばれ、11月には問題のエリアに新しいバイパス道路が開通した。

 

この道は、ミャワディから25キロほど進んだ地点から、コーカレイまでの約40キロを結ぶもので、タイの支援で造成された。旧道は、路幅わずか3メートルほどの区間があるため、隔日の片道通行を余儀なくされており、舗装の剥がれや陥没穴も多く、途上で故障車が出ると、修理が済むまで後続車も足止めとなる。

 

それに対し、新道はハイクオリティの舗装道路で、対面2車線とはいえ、追い越しも可能な道幅だ。旧道では最短でも90分はかかっていたのが、わずか40分ほどに短縮された。

 

メーソートには巨大なミャンマー人のコミュニティがある
メーソートには巨大なミャンマー人のコミュニティがある

 

ミャワディ国境を通関するための渋滞。今後はさらに交通量が増えることが予想される
ミャワディ国境を通関するための渋滞。今後はさらに交通量が増えることが予想される

南シナ海とインド洋を結ぶ最短ルートとしての期待

残る問題は、コーカレイ以降の整備だが、ここにもADB(アジア開発銀行)から約1億米ドルの投資が決まった。また、道中に架かる3本の古い橋についても、日本政府が円借款事業での架け替えを予定している。こうした支援策からも、東西経済回廊に注がれる国際社会の熱い視線を感じ取れる。

 

地元住民によると、新道開通以降すでに大型トラックの通行が増えてきているという。しかし、道路以上に期待するのは、東西経済回廊の開通を見越し、周辺エリアで計画が進む複数の工業団地だ。ミャンマー人は簡単な手続きでタイヘ自由に出入りできるし、給料もタイのほうが3倍近く高い。いまでも毎日たくさんの人が国境を越え、タイ側で違法に働いている現実がある。だからミャンマー側で合法的に働ける場所ができることは大歓迎なのである。AECの始動と経済回廊は、このエリアの人々に明るい未来を運んでくることができるだろうか。

 

こうして東西1450キロに及ぶ旅は、インド洋に出て終着点を迎える。ベトナム・ダナン港から、ミャンマー・モーラミャイン港が結ばれたわけだが、さらにインフラの整備が進めば、この回廊は南シナ海とインド洋を結ぶ最短ルートとなる。マレー半島を迂回するよりも早いのだ。

 

しかしそのためには、とくにラオスとミャンマーでの道路の拡充が必要だ。モーラミャイン、ダウェイでは大型船の停泊ができる深海港の整備もしなくてはならない。しかしようやく道はつながった。インドシナ半島の新しい時代を担う回廊へと成長していくだろう。

 

ミャワディ〜コーカレイ間には新バイパス道路が開通した
ミャワディ〜コーカレイ間には新バイパス道路が開通した
東西回廊のゴール地点、モーラミャインの街ASEAN.
東西回廊のゴール地点、モーラミャインの街ASEAN.

 

本連載は、2016年1月20日刊行の書籍『新視点がヒントになる アセアン経済回廊』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

室橋 裕和

ライター

1974年生まれ。週刊誌記者を経てタイ・バンコクに移住。現地で10年、日本語情報誌の記者としてアジア各地で取材に当たる。現在は東京に拠点を移し、アジア関連の雑誌、書籍、ウェブなど各媒体で活動するアジア専門ライター。

著者紹介

連載インドシナ経済回廊の現場を歩く

新視点がヒントになる アセアン経済回廊

新視点がヒントになる アセアン経済回廊

室橋 裕和

キョーハンブックス

地図とグラフで読み解くアジア新時代 アジアで働くビジネスマン必携の一冊! 2015年末に発足したアセアン経済共同体(Asean Economic Community)。人とモノ、マネー の流れがより活発になり、注目を集めるアセアン地域を、地図…

Special Feature

2016.12

「法人保険」活用バイブル<書籍刊行>

決算対策、相続・事業承継、財産移転・・・企業とオーナー社長のさまざまな課題解決に、絶大な効果を発揮する「法人保険」の活用…

GGO編集部(保険取材班)

[連載]オーナー社長のための「法人保険」活用バイブル~決算対策編

【第19回】保険のための医的診査 結果が「少し悪い」ほうが社長が喜ぶ理由

GTAC(吉永 秀史)

[連載]法人保険を活用した資産移転の節税スキーム

【第15回】「逆ハーフタックスプラン」活用時の留意点

Seminar information

不動産活用セミナーのご案内

償却メリットを狙った「京都の町家」投資の魅力

~建物比率5割超&4年で減価償却も可能!独自の不動産マーケットを形成する京町家だから実現する投資法

日時 2016年12月10日(土)
講師 平野準

海外不動産セミナーのご案内

償却メリットにフォーカスした「ハワイ不動産」投資の最新事情

~築古木造のタウンハウスで建物比率80%以上。「ハワイの償却物件」の実際と活用法

日時 2016年12月10日(土)
講師 大橋 登

海外活用セミナーのご案内

国際金融都市「香港」で始めるグローバル資産防衛

~本格的な海外投資環境を整えるメリットと現地の最新金融事情

日時 2016年12月10日(土)
講師 長谷川建一

The Latest