(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢母と娘家族が住む家、そして亡き父の先妻の息子家族が住む家は、同じ敷地の隣同士。しかし、父の相続時には先妻の長男と大揉め、母自身の相続対策時には、同居の二女に突き上げられ…。親族間トラブルに母は疲れ果ててしまいます。山積する問題にどう立ち向かえばいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

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同じ敷地に建つ家で、母親違いのきょうだいが生活

今回の相談者は、50代の専業主婦の山下さんです。80代のお母さんと50代の妹さんを伴い、3人で筆者の事務所を訪れました。

 

山下さんの父親は数年前に亡くなっています。じつは、父親の相続人は山下さん・母親・妹の3人だけではなく、父親の先妻の子として長男と二男がいるという状況でした。

 

山下さんの父親は、200坪の敷地と2軒の家を所有していました。そしてそこには、山下さんの母親と妹家族、そして、先妻の長男家族と独身の二男が住んでいました。

 

広い土地に、2軒の家がゆったりと建てられており、敷地の周囲には緑豊かな木々や草花が植わっています。

 

父親が存命中は、両親と妹家族が1軒の家に同居し、もう1軒の父親名義の家には長男家族と独身の二男が無償で暮らしていました。

 

父親は遺言書を残さず亡くなりました。先妻の子どもである長男・二男を交えて遺産分割協議をした際、山下さんの母親は長男家族に、現在暮らしている家と敷地の半分を相続してはどうかと提案しました。ところが、ちょっとした言葉の行き違いから話し合いは紛糾。激怒した長男は相続をすべて放棄するといい出し、二男もそれに続きました。

 

そのため、200坪の敷地は母親と妹の共有名義となり、建物は2軒とも母親が相続しました。

 

長男家族と二男はこれまで同様、同じ家に無償で暮らしていますが、現在は関係が壊れてしまい、山下さん姉妹や母親とも、意思疎通が図れないということです。

母親違いの兄はヘソを曲げ、妹は欲望が炸裂…

山下さんの母親は、先妻の子である長男と二男と養子縁組をしていないため、母親の相続人は山下さんと妹になります。つまり、母親の財産は山下さんと妹で半分ずつ分けることになります。

 

筆者がその説明をしたとき、妹が声を上げました。

 

「過去の贈与は、遺産分割に影響しないのでしょうか。姉の子たちは、両親からいろいろ贈与をしてもらっていますが、うちの子はなにももらっていません。そんなの不公平ですよね?」

 

妹は新卒入社した会社にいまも勤務していますが、姉である山下さんは、父親の生前、父親が経営する会社で事務仕事を一手に引き受けていました。その点を考えると、妹とは貢献度が違います。ほかにも妹は、両親が建てた二世帯住宅に無償で住んでおり、特別受益があります。

 

それにもかかわらず、妹は現金贈与だけを比べ、「自分ばかり損をしている」と母親に不満をぶつけます。そのため、母親とはしばしば言い争いになるといいます。

最後は母親の「意思」と「決断」で解決するしか…

「先のことを考えると、本当に頭が痛くてたまらないのですよ…」

 

山下さんの母親は、疲れ切った表情でつぶやきました。

 

先妻の子どもたちの「使用貸借」の解決だけでも難題ですが、妹は自分なりの主張を展開し、山下さんや母親とは相続財産についての温度差があります。この状態で遺産分割の方針を決めて解決するのは大変です。

 

これについても紆余曲折ありましたが、結局、山下さんの母親が遺言書を作成し、相続財産が姉妹で均等になるよう調整しました。そしてそれについては、山下さん姉妹も納得するかたちとなりました。

 

「とりあえず、問題のひとつは片付いたわけですね」

 

山下さんのお母さんは安堵の表情を見せました。

 

山下さんの妹のように、不満を抱え込んでいる相続人は、なにかのきっかけで暴走しかねません。それを防ぐためにも、母親の意思を明確に伝え、遺言書でしっかりと歯止めをかけることが大切です。

 

残る問題は、先妻の子どもたちの使用貸借ですが、こちらは専門家を交え、地道に解決する方法を選択しました。幸い、母親は80代と高齢でも、心身はまだしっかりしていますので、親族それぞれに禍根が生じないよう、これから十分な話し合いを続けることになります。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

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曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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