前回は、事業承継によって経営者が果たすべき目的について説明しました。今回は、事業承継で経営者に求められる「事前準備」について見ていきます。

いつ自分がいなくなっても業務が継続できる体制に

まだまだ元気と思っていても、自分の身にはいつなんどき、何が起こるかわかりません。経営者として時代の荒波をわたってきたのであれば、一時の安定がいつまでも続くわけではないことを身に染みて感じているかと思いますが、これは自らの人生にもそのままあてはまることです。

 

もし自分の身に何かあった時に、果たして会社は業務を継続していけるのか。その発想の延長上に、事業継承があります。経営者としては、いつ自分がいなくなっても会社が続いていけるように準備しておくことが大切であり、事業継承はその集大成ともいえる取り組みなのです。

人脈・情報は「法人」の誰かに引き継ぐ

「自分の棚卸」を行えば、自分の人生を振り返ることができます。多くの経営者は、自分の人生の半分以上を、事業に費やしてきたことに気づくでしょう。また、マニュアルにおいて人脈の引き継ぎ名簿も作成しましたが、その意味としては、人脈を物理的に引き継ぐ以外にも、自らが法人に残すべき大切な相手を改めて書き出すことで、彼らが自らの人生でどのような役割を担ってくれたのか、再認識するということもあります。

 

事業継承を行うのは、第一に従業員のためですが、第二には、自らの人生の総決算として成功させなければいけないことであるといえます。なお、人脈の引き継ぎに関しては、法人とはひとつの「人格」であると仮定して行います。すなわち、経営者個人の人脈に思えても、それは実は法人という人格が持つ人脈であり、自分固有のものではないと考えることです。

 

法人が人格であるなら、人脈と情報はその人格における財産となりますから、経営者はできるだけ法人に対して人脈や情報を引き継ぐ必要があります。

 

ただし、これらは必ずしも後継者に引き継がなければならないわけではありません。法人というひとつの人格に対して引き継げばよいのですから、例えば営業に有用な人脈は営業部に直接引き継ぐほうがスムーズなら、営業部トップに引き継げばよいのです。無理にすべてを後継者に引き継ぐ必要はありません。

 

また、こうしたことを考えるだけでも、事業継承の準備に入っているといえます。さらに思考だけではなく、折を見て後継者候補に決算書の見方を教えるなど、アクションを起こすことも必要です。すべてをまとめて、無理に一度で済まそうとするより、まずは昨日とはひとつでも違うことを行おうという意識を持ち、細かいことを積み上げていくのが大切です。

本連載は、2015年10月25日刊行の書籍『たった半年で次期社長を育てる方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった半年で次期社長を育てる方法

たった半年で次期社長を育てる方法

和田 哲幸

幻冬舎メディアコンサルティング

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