日本が豊かになっていく過程で、顧客は商品の多様性を重視するようになり、従来の大量生産型ビジネスモデルでは厳しくなってきました。ある二代目社長は、主力商品の売り上げ低下をきっかけに、ライバルとして台頭してきた中国の商品を視察すべく現地の工場を訪れますが、目の前に広がるけた外れの光景に「これでは勝てない」と、大変な衝撃を受けます。

多様化する消費者ニーズ、大企業は対応可能だが…

消費者ニーズの多様化は、価格競争と同様に、生活に必要なものがひと通り揃ったことによる結果です。これも中小企業には厳しい変化で、特に中小メーカーは対応に苦労することになりました。

 

国全体が豊かになっていく中で、消費者はまず安さを求めるようになりました。また、企業の努力と価格競争によってある程度の安さが実現されると、次の段階として他と違うもの、自分らしいものといった基準でもの選びをするようになります。大量生産される既製品ではなく、機能、見た目、特徴などの点で、ニーズが分散し、一つひとつのニーズが小さくなっていくわけです。

 

ニーズの多様化は、簡単にいえば、顧客を一つの塊として捉えるのではなく、細分化して捉えるということです。従来は一つの商品で大勢のお客さんが満足してくれましたが、ニーズが多様化した市場では、複数の商品を作り、複数のタイプのお客さんを満足させなければなりません。

 

大手企業は、それが可能です。資金や労働力が豊富ですので、新たな商品を作り出し、ラインナップを広げていくことができます。しかし、中小企業はそれができません。商品開発に取り組む余裕がなく、特にメーカーは一つの商品を作るだけでもそれなりの設備投資が必要になるため、多品種小ロットの生産体制を作ることができないからです。

 

そのため、ニーズの多様化に対応していくには、「これ」という層のニーズに絞り込んで商品を作る必要があります。私の会社の例でいえば、バターピーナッツを好むお客さんだけに絞って商売するということです。当然、バターピーナッツ以外を求めるお客さんは諦めなければならず、その分だけ売り上げは減ります。バターピーナッツを好むお客さんが減っていくリスクもありますし、お客さんを限られた層だけに絞り込むこと自体が賭けです。

 

実際、80年代まではバターピーナッツがおつまみの定番として認識されていましたが、消費者の好みが多様化し、それに対応するための新たな商品の開発に迫られてもいました。そのような変化も含めて、私が入社した1977年ごろは、市場の嗜好が変わり始めた時期であり、地方の中小メーカーの不況が始まった時期でもあったのです。

 

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小さな豆屋の反逆 田舎の菓子製造業が貫いたレジリエンス経営

小さな豆屋の反逆 田舎の菓子製造業が貫いたレジリエンス経営

池田 光司

詩想社

価格競争や人材不足、災害やコロナ禍のような外部環境の変化によって多くの中小企業が苦境に立たされています。 創業74年を迎える老舗豆菓子メーカーの池田食品も例外ではなく、何度も経営の危機に直面しました。中国からの…

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