子どもが不登校になったら、保護者は愕然としてしまうかもしれません。 しかし「学校にさえ行ってくれたら」と思ってしまうと、子どもはその期待に応えられない自分を責め、さらに学校に行きづらくなるという悪循環を生みます。本記事では、不登校児の親としてこの問題に対峙してきた、ほしな和生氏の著書『子どもが不登校になったら』から一部を抜粋・再編集し、「不登校の子ども」との向き合い方について考えます。
「学校へ行かせるか、行かせないかの二択。」不登校児の母が語る苦悩 (※画像はイメージです/PIXTA)

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今まで通り学校へ行かせるか、行かせないかの二択

我が子が不登校になった当時、フリースクールについては一通り調べていましたが、私の居住地近隣にはなく、遠方に時間をかけて通わせる気にもなれず。その結果、私の選択肢は、今まで通っていた学校へ行かせるか、行かせないか、究極の二択のみ。

 

このとき、私はもっと選択肢がたくさんあれば、と切に思いました。つまるところ本人が自分の意志で行かない限り、学校の教室へ入ってまた再び授業を受ける、という道はありえないな、と改めて思っていました。

 

基本的に子どもが通っていた中学校は、無理に学校(教室)には連れて行かない、という立ち位置。不登校生向けの私立学校やフリースクールなどの情報も皆無でした。やはり立場的にそういう情報は教えることができないのでしょうか。

 

ただ、中三の担任の先生はいつも何かと子どものことを気にかけてくださっていました。

中三担任の願い「卒業式だけでもみんなと一緒に」

明日は卒業式、という日にも、「せめて卒業式だけでもクラスのみんなと一緒に出て欲しい」と言って家まで来られ、直接子どもに涙ながらに訴えてくださいました。結局みんなと一緒に出席はできませんでしたが、担任の先生にお願いをして、別の時間帯に校長室で一人だけの卒業式を開催していただきました。

 

校長先生はじめ各クラス担任の先生方も集まってくださり、温かい雰囲気の中、無事卒業証書をもらうことができました。私は今でもその光景を鮮明に思い出すことができます。

不登校児の母が語る「一人の時間を作ること」の重要性

私は、子どもが学校に一人で行けるようになってからも短時間勤務を続けていました。家の前で子どもと別れたあとは、会社に行くまで自分だけの時間を少しだけ確保して、喫茶店でモーニングサービスをゆっくり食べながら、誰にも邪魔されないひとときを過ごしました。

 

私自身を常に平静に保ってくれる、とても貴重な時間でした。一人の時間を作ることは、特に忙しいお母さんにとって、とても大切だと思います。

 

不登校になった当初は、なんとか学校へ行ってくれたら、という思いが強くて、ついその思いを子どもに押し付けていたと思うのですが、でも徐々に、学校には行けなくてもいいか、高校にも行けなくていいか、そして最終的には、子どもが幸せに生きていたらそれでいいか、と思えるように。実はそう思えた瞬間、随分私の気持ちは楽になりました。

 

 

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ほしな 和生

大阪府立大学卒業。 某大企業勤務時代に小学校への出前授業を一から企画、教材開発し、講師として教壇に立つ。 延べ1万人の子どもたちに授業を実施。 出前授業は「キッズデザイン賞」、「おおさか環境賞」大賞受賞。 その後独立してフリースクールを立ち上げ、学校に行っていない子どもとその保護者のサポート支援に従事。 趣味はバンド活動、動植物飼育、日本酒、旅行など。