資金繰りの重要性はわかっていても、実際にはなかなか思うようにいかない・・・。そう感じている経営者の方は多いのではないでしょうか。本連載は、“ナニワの人情税理士”として知られる鈴木和宏氏の著書、『中小企業のオヤジだけが知っている儲けのカラクリ』(マネジメント社)の中から一部を抜粋し、「儲かる社長」が実践している資金繰りのノウハウをご紹介します。

会社における「社長の役割」とはそもそも何か?

いきなりですが、ブレーキのない電車に乗りたいと思う人はいません。それは大変危険なことです。大きいことはいいことだと売上ばっかり考えて、ブレーキをかけずに行動する社長の会社はどうなるでしょうか。会社における社長の役割とは、なんでしょうか?

 

社長として大事な役割のひとつが、お金を上手にやり繰りする「資金繰り」です。会社のために自分のお金を投入することではなく、銀行から借りてくる資金繰りも社長の責任として重要な役割があります。

 

資金繰りの重要性を知らない社長は、資金繰りとは〝お金がなくなってから借りにいくもの〟と考えています。そのような社長は、いつもギリギリで資金繰りをしていることがほとんどなので、月末はヒヤヒヤで精神的にもよくない状況にあります。

 

その対策として、私のお客様には、「1か月分の運転資金(「受取手形+ 売掛債権+ 棚卸資産」 ― 「支払手形+ 買掛金」)があるうちに銀行に追加融資を受けると資金繰りが楽になりますよ」とアドバイスしています。

 

たとえば、在庫があるうちに次の商品仕入をするのと同様に、お金も余裕があるうちに借りると精神的な負担が軽くなるはずです。

 

社長は、利益を上げることに集中しすぎて、資金繰りをおろそかにしてしまいがちです。売上を上げることは社員が一丸となればできます。しかし、資金繰りは、社長自らがやらなければならないので、売上を上げるのに負けず劣らず重要な仕事なのです。

 

資金繰りを考えるうえでいちばん大切なのは、「将来、どんな用途(運転資金、設備資金)に、いくらぐらい必要なのか」という見通しを立てることです。そういう情報と判断の意思決定をするのが社長の役割です。どんなに利益を出しても、資金繰りに失敗して資金不足になれば倒産してしまいます。

 

逆に、利益が出ていなくても、資金繰りさえできていれば倒産しません。事業を続けられるかどうかは、まさに社長の資金繰りにかかっているのです。

資金繰りができなければ「社長失格」!

 資金繰りには具体的につぎのような目的があります。

 

●日々の支払をスムーズに行うために「お金の出入り」を管理すること

売上が増えれば増えるほど、仕入が先行します。資金の不足額が大きくなったりします。

 

●向こう1年先くらいまでの資金繰り状態を把握し、資金不足であれば先手を打つこと 

「季節変動」、つまり、1年を12か月と考えた場合、どうしても売上が落ち込む時期があり、お金が足りなくなったりします。

 

●日々の無駄な支出をつかみ、見直しをすることにより資金繰りを楽にすること

会社の無駄を省くことです。本当にその経費が必要か、代替するものがあるかを検討します。

 

●会社の長期的成長という視点に立って、意思決定の指標にすること

会社の成長と借入金の返済などのバランスを取りながら、手元にお金を残し、将来の方向性を決定する材料にします。

 

赤字決算の場合は、翌年以降に取り戻すことができますが、資金繰りの失敗は、取り返すことができません。その時点でホイッスルが鳴り、ゲームが終了して会社は倒産します。
資金繰りができなければ「社長失格」なのです。

つまり、逆をいえば、利益は出ていなくても、資金繰りさえできていれば倒産しないのです。

 

冒頭で、ブレーキのない電車に乗りたいですか? と問いました。

 

儲かっている社長は、ブレーキのある電車に乗り、安心と安全という運転手の役割を果たしています。資金繰りをしっかりと認識して左うちわになるように、1時間でも早くキャッシュをゲットできるように行動しています。

本連載は、2015年12月12日刊行の書籍『中小企業のオヤジだけが知っている儲けのカラクリ』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

中小企業のオヤジだけが知っている儲けのカラクリ

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鈴木 和宏

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