今回は、会社の作業効率を見直すことで、利益を大幅にアップさせる方法を見ていきます。※本連載は、“ナニワの人情税理士”として知られる鈴木和宏氏の著書、『中小企業のオヤジだけが知っている儲けのカラクリ』(マネジメント社)の中から一部を抜粋し、「儲かる社長」が実践している資金繰りのノウハウをご紹介します。

業務フローを「ゼロ」から構築し直してみる

皆さん、利益を5倍にする方法を考えてみたことはありませんか?大阪弁で「あんさん、そんな無茶なこというて冗談やおまへん」という言い方をします。しかし、会社の中での利益のボトルネックである、作業の効率が最も悪いところや、詰まりやすい所を探して、利益が5倍になるようやっていきましょう。

 

まずは、会社全体の業務フローを大局的に検証します。以下のところを、過去のしがらみ、常識にとらわれず、ゼロから構築しなおしてください。

 

●仕入の方法製造の方法─販売の方法

管理の方法─営業の方法─教育の方法

 

値段だけに思いを寄せてしまうと、商品・サービスの開発や、仕入に対する選択肢がどんどん狭くなってしまい、ままならぬこともあります。安いものという意識が高まると、いいものは使えないことになります。

 

売上しか考えていない社長は値上げに躊躇します。値上げは売上が減少する場合が多いからです。しかし、私は、「原価が上昇している環境のなかでは、売上を守ることができても粗利益は確実に落ち込んでしまうので、値上げをしてみてはどうですか?」とアドバイスをしています。

 

値上げで粗利益率を確保・改善できれば、売上が減少しても粗利益額は守れるかもしれません。じっとしながら経営していくよりは、価格の改定という防衛策を打たなければなりません。

 

売上一辺倒で、粗利益額の管理を行っていない経営者は、経営が見えなくなってしまいます。たとえば、丹波篠山のパン屋さんを考えましょう。

 

丹波篠山のパン屋さんは、問屋やメーカーから材料や商品を仕入れてパンを製造し、お客様に販売します。問屋やメーカーは、自分たちの利益を確保できる卸価格を提示してきます。原材料や輸送費、労務コストの上昇があれば、それらのコストを卸価格に乗せようと考えます。一方、お客様は、よりいいものを、より安く、おいしいものを求めます。

 

丹波篠山のパン屋さんは、仕入価格の上昇の圧力と、お客様の厳しい目の板ばさみになります。丹波篠山のパン屋さんの社長がお人好しであれば、その板ばさみの中でどんどん利益を食われて、どこかで赤字になるデッドラインを割り込んでしまいます。

 

どの業界も、結局、ビジネスというものは、様々な利害が絡み合う厳しい戦いです。対応策を怠ると、利益は少なくなる方向にしか働かないようにできています。

現状を打破するために「慣習」を疑ってみる

高度成長期に皆がどんどん儲かった時代には、自然に利益が上乗せされることもあったようです。成熟社会の日本では今後は期待できません。ましてや、昨今のような人口減少社会では、簡単に売上が増加することは期待できませんから、材料費や商品仕入、あるいは外注費は非常に重要な存在です。

 

時代の変革とともに、新しい流通ルートの開拓や新製品の開発、あるいは市場の国際化が進んでいます。何も考えることなく過去からの取引を継続しているだけでは見えてこないものです。慣習の現状打破を常に考えなければいけません。

 

こうした仕入や外注費等の費用の工夫は原価率の引き下げにつながり、付加価値である粗利益率を高めることになります。仕入先を変えるとともに、付加価値を高めるためには次のようなことを考えなくてはなりません。

 

地域の人口や消費を増やす工夫を考え、お客様のリピート率を高めていく

地域のニーズをもう一度掘り起こし、市場(エリア)を広げていく

インターネットなど、新しい武器で売り方を広げ、時代や市場に合った新しいモノやコトを考え出す

同業者や異業種との共同化やネットワーク化を進めて販売体制を整える

既存のモノやサービスに付加価値をつけ、自社にしかないモノ、自社にしかできないコトの強みを見つける

 

時代はどんどん進化しています。儲かる社長は原価計算を常に念頭において経営を押し進めています。

本連載は、2015年12月12日刊行の書籍『中小企業のオヤジだけが知っている儲けのカラクリ』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

中小企業のオヤジだけが知っている儲けのカラクリ

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鈴木 和宏

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