日本企業全体の3分の1が後継者未定といわれるなか、政府が事業承継対策に乗り出している。平成30年度税制改正においては、事業承継時の贈与税・相続税の納税を猶予する「事業承継税制」が大きく改正され、10年間限定の特例措置が設けられた。本連載では、事業承継サポートに取り組む、株式会社ビジネスマーケット・代表取締役社長の表一剛氏が、今からできる事業承継対策について解説する。

お盆休み・年末年始に「事業承継」に関する相談が増加

事業承継のような、人生における大きな転換点について考えるには、親族や従業員といったステークホルダーとの、現在の関係だけでなく、未来における関係やその成長、あるいは年老いていくことも念頭に置きながら、計画的に進めていくことが必要です。

 

このような複雑かつ場合によっては厳しい決断を、通常の業務と並行して進めていくことはなかなか難しいものです。特に、ステークホルダーの将来を冷静に見定めながらと思っていても、日々起こる事象への対応状況などによる感情の起伏をコントロールしながら、冷静に将来計画を練るということはなかなかできるものではありません。

 

そういった意味では、お盆休みや年末年始というタイミングは、自然と家族との会話がなされる機会が増えたり、オーナー自身も暫し多忙な業務を離れ、代々続いてきた事業であれば、その歴史に思いをはせたりすることが多くなるのではないでしょうか? まさにこの時期の前後で、我々のような支援会社へのご相談が増えるのも事実です。

 

このお盆休みの時期が、皆様にとって良い検討の時期となるように願いながら、前回までの振り返りをしたいと考えています。前回は、事業承継の支援策について、オーナーご自身での評価を行うことの大切さについて述べました(関連記事『事業承継に悩むオーナーにも役立つ「ファクトフルネス」の見方』参照)。

 

その評価を行うと、事業承継計画の可視化として、初めて立てた計画について気になった人もいるのではないでしょうか? そうなのです。前回の計画では、ステークホルダーの未来についても着眼しながら、計画を立案することの大切さにフォーカスしていました。

 

しかし前回述べた事業承継の支援策では、その検討や施策の推進については、記載していません。今回は、支援策の検討も含め、ここまでのインプットを踏まえた事業承継計画の見直しを行っていきましょう。

 

計画というものは一度作成すればいいというものではありません。事業自体が日々刻々と変化するのは当然ですが、それをとりまくステークホルダーとの関係もしくは、ステークホルダー自身の境遇も変化します。さらには計画を遂行するにあたっての政府や自治体といった行政による支援策も年々変化しています。それを踏まえた計画とするべく、見直しを行っていく必要があります。

 

「そんなことを言っていたら、いつまでたっても計画が完成しないじゃないか」とお叱りをうけるかもしれませんが、オーナーが目指すゴールは、計画の完成ではなく、事業承継を円滑に実行することであることを忘れてはなりません。

 

かの有名な「トヨタ生産方式」の柱の一つである「ニンベン」がつく「自働化」では、「5回のなぜ」を繰り返し、本質的なカイゼンを実現するといいます。詳細は、数々の書籍に譲ります。検討の回数にこだわる必要はありませんが、何度も見直しを行っていくことで、オーナー自身が対面する事業承継の各ステップや、実現後の会社の姿の解像度が上がっていくことは間違いありません。

2023年3月末までに「特例承継計画」を要提出

今回、一体何を見直すのかというと、前回の記事で述べた支援策を利用するか否かということです(下図赤枠内参照)。

 

[図表]税制優遇措置の導入検討を加味した事業承継〇年計画(記載例)
[図表]税制優遇措置の導入検討を加味した事業承継〇年計画(記載例)

 

例えば、事業承継税制の特例措置を受けるべく準備をしていこうと考えるのであれば、特例措置には時限設定がありますので、その時限設定から期間を逆算して、事業承継計画の立案タイミングを設定する必要があります。

 

また、事業承継計画を立案すればいいだけではなく、特例措置を受けるべく作成した特例承継計画に対しては、認定経営革新等支援機関(商工会、商工会議所、金融機関、税理士等)が所見を記載する必要がありますので、その支援機関からの所見を受けるための期間も考慮する必要があります。さまざまな支援機関がありますが、この所見を受けるために平均で3ヵ月ほどの時間を要するといったコメントが多く見受けられます。

 

こういった時限措置といったものは、その締め切り間近になると、申請が急激に増加してしまい、タイムリーに認定を受けられない可能性もあります。


例えば、2019年10月に消費税率が10%への引き上げが予定されていますが、それに合わせて実施される、消費税軽減税率制度(複数税率)への対応が可能なレジの導入に対する補助金制度をご存じでしょうか? この制度も、当初はあまり利用者が多くなかったようですが、現在は申し込みが殺到しています。締め切りまではまだ時間があるのですが、レジのメーカーの納品が間に合わず、補助金を受けられない可能性がある自治体もあるようです。

 

このような事例を念頭に置けば、導入の可否判断は、その期限が迫ってきたタイミングではなく、事前に検討しようと思えるのではないでしょうか。

 

こういった、さまざまな観点や施策を検討することを想定すれば、ひょっとしたら「5回のなぜ」だけでなく、もっと見直しが必要となってくるかもしれませんね。大切なことは、ゴールである承継後の会社の姿をしっかりと見定め、そこまでの計画を練るという、いわゆる「バックキャスティング」を行い、その上で一歩一歩慎重に計画を進めることです。

 

 

表 一剛

株式会社ビジネスマーケット 代表取締役社長

 

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