特集2015.11「会社を売る」という選択肢

相続・事業承継 M&A
連載勝ち残る中小企業のM&A活用法【第11回】

通常のM&Aが困難なケースで浮上した「MBO」という選択肢

M&AMBO

通常のM&Aが困難なケースで浮上した「MBO」という選択肢

前回は3つ目の事例として、地方の会社が団結して持ち株会社を設立し、大手に対抗したケースを紹介しました。今回は、第三者へのM&Aではなく、「MBO」を実施したケースを見ていきます。

高い利益体質ながら「後継者」が見つからない・・・

四つ目の事例として、M&Aの一種であるMBO(従業員への承継)をコンサルティングしたケースを紹介します。

 

北陸地方で有数の技術力を持った、ある金属加工メーカーがありました。当時70代のオーナー社長から、最初の相談を受けたのが05年末のことでした。その会社は、名前を聞けば誰でも知っている東証1部上場企業と縁が深く、長年にわたって部品を納入していました。売上の過半はその上場企業に依っており、当時年商は30億円ほどで、高い利益体質を誇っていました。

 

ご多分にもれず、この会社も後継者のことで悩みを抱えていました。息子さんはいたものの、諸事情により社内には入っておらず、後継には無理がありそうでした。娘さんも管理担当として社内にいましたが、力仕事を伴う事業を継がせるには忍びないという気持ちがオーナー社長にはあったようです。

様々な特殊事情から導き出された「MBO」という結論

当初、相談を受けて考えたのは、納入先の上場企業に買収を持ちかけるという方向性でした。オーナー社長の会社は、長年、その上場企業の下請けとして貢献してきたわけで、上場企業もその技術を評価していたからです。

 

実際、特定の数社との商取引が売上の大半を占めるといったケースでは、キーとなる会社に買収を持ちかけるといったことはよくあります。実態としては親会社と子会社のような関係になっているケースもあり、〝親会社〟に妥当な価格で引き取ってもらえるなら、話も早くまとまるからです。

 

けれども、調べてみると、その上場企業と取引のある同様の会社が、全国各地に20ほどあることがわかりました。うかつに上場企業に「実は後継者がいないので買ってほしい」などと持ちかければ、それを機に、縁が切れるのではないかという心配をしました。

 

大事な下請けが数社しかないというなら話は別でしょうが、20も同様の会社があるとなるとどうでしょう。事業の継続が曖昧というなら、この機に発注を止めて他の類似の企業に注文をスライドするかもしれません。上場企業としても、安定した部材の調達は大切だからです。また、勘ぐればですが、上場企業が主導する形で20 ある他の類似メーカーとの合併などを求めてくるかもしれません。そうなった場合、売却価格や条件の面で買い手となる企業が優先されることも想像できました。

 

そんなことから、まず上場企業に買収してもらうという線は、オーナー社長と相談のうえで消去しました。次いで、第三者へのM&Aも検討はしたのですが、業種ならではの難しさがありました。金属加工業には騒音がつきまとい、周辺住民などへの配慮が求められます。そのため、現在事業を行っているのも昔からこれ一筋でやっているような企業が中心で、新規の進出などが難しいのです。また特殊な事業ゆえに、事業に必要な知識や経験も関係者にしかわからず、第三者の企業が買って簡単に「異業種進出」とはいかないという事情もありました。

 

そこで考えついたのが、事業承継ファンドへの承継、つまりMBOだったのです。

 

このケース例は次回に続きます。

本連載は、2013年9月20日刊行の書籍『会社を息子に継がせるな』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

畠 嘉伸

株式会社スターシップホールディングス 代表取締役兼CEO

税理士・米国公認会計士。東京の独立系M&A専門会社にて、後継者難の企業に対するM&Aコンサルティング、M&Aによる企業再建コンサルティングを手掛ける。その後、監査法人系公認会計士事務所にてベンチャー企業の新興市場への公開支援業務、企業価値評価業務を手掛ける。

著者紹介

連載勝ち残る中小企業のM&A活用法

会社を息子に継がせるな

会社を息子に継がせるな

畠 嘉伸

幻冬舎メディアコンサルティング

現在、9割の中小企業経営者が後継者不在という問題を抱えています。息子がいない、いても“家業"に興味を示さない、あるいはオーナー社長が手塩にかけてきた会社を任せられるほどの才気がない。だからといって、廃業を選んでし…

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