今回は、被相続人が「ベトナム」国籍の場合の準拠法について説明します。※本連載では、東京弁護士会法友会の編著書、『所有者不明の土地取得の手引―売買・相続・登記手続』(青林書院)の中から一部を抜粋し、不動産の相続について、相続人が外国人である場合や、被相続人が外国人である場合の対応について解説します。

相続人不在の場合、不動産は日本の国庫に帰属する

概 説

 

ベトナムの相続に関する準拠法は,民法が規定している。
ベトナム民法767条「外国的要素を持つ法律による相続」が,渉外相続について規定している。

 

その2項は,「不動産に対する相続権は,当該不動産の存在する国の法律を遵守しなければならない。」と規定しているから,外国所在の不動産の相続は,その所在地法が準拠法となる。

 

また3項は,「相続人がいない不動産である遺産は,当該の不動産の存在する国に帰属する。」と規定されているから,日本に不動産を有するベトナム人が死亡し,かつ相続人が不存在の場合,その不動産は日本の国庫に帰属することとなる。

 

余談であるが,4項は,「相続人がいない動産である遺産は,当該の被相続人が生前に国籍を有した国に帰属する。」と規定しているから,動産については,ベトナムの国庫に帰属することとなる。

 

なお,動産と不動産の区別については,その財産が存在する国の法律に基づいて確定されるとされている(ベトナム民法766条3項)。

ベトナム民法の日本語訳はJICAのサイトで閲覧可能

上述のとおり,日本に不動産を有するベトナム人が死亡した場合の相続準拠法は,日本法に反致するから,相続人がいなければ,相続財産管理人が選任されることとなる。しかし動産については,相続準拠法はベトナム法であり,相続人の範囲は日本法と一致しておらず,死亡者の伯父・伯母,叔父・叔母も第3順位の相続人とされている。すなわち,ベトナム民法676条1項は,次のように規定している。

 

「法律による相続人は,以下の順位に従って規定される。a)相続の第1順位には,死亡者の配偶者,実父,実母,養父,養母,実子,養子を含む。b)相続の第2順位には,死亡者の父方の祖父母,母方の祖父母,実の兄弟姉妹,父方の祖父母,母方の祖父母である死亡者の実孫を含む。c)相続の第3順位には,死亡者の曾祖父母,死亡者の伯父・伯母,叔父・叔母,伯父・伯母,叔父・叔母である死亡者の甥・姪,曾祖父母である死亡者の実曾孫を含む。」

 

そのため不動産を有するベトナム人が死亡し,日本法に従って相続財産管理人が選任された場合,不動産(主に建物)内部にある動産については,死亡者の伯父・伯母,叔父・叔母が相続権を有する可能性があり,死亡者の伯父・伯母,叔父・叔母の所有権放棄を取り付けなければ,当該動産を処分することができないという状況に陥るものと思われる。実務上は,相続財産管理人が当該不動産を第三者に売却し,買い取った者に動産の扱いをまかせることもあろう。

 

 調査方法

 

ベトナムの民法の日本語訳は,JICA(国際協力機構)のウェブサイトで閲覧することができる(「ベトナム六法」とのタイトルのページに各分野の法律の日本語訳の一覧がある)。

 

ベトナムの民法典は2005年6月14日に,ベトナム社会主義共和国の国会において成立したもので,それ以前に出版された文献は,現行法に準拠していない可能性があるので,注意を要する。

 

ベトナムの民法,あるいは相続法について解説した書籍は,見当たらなかった。

本連載は、2017年5月9日刊行の書籍、『所有者不明の土地取得の手引―売買・相続・登録手続』から抜粋したものです。稀にその後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

所有者不明の土地取引の手引 ―売買・相続・登記手続

所有者不明の土地取引の手引 ―売買・相続・登記手続

東京弁護士会法友会

青林書院

全国に点在する所有者不明土地。手続上の諸問題につき、相続、売買、登記、税務等の実務上の論点を整理した手引の決定版! 取得したい土地の所有者の相続人が多数の場合や相続人の中に外国人がいる場合の対策についても解説。

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