今回は、被相続人が「ブラジル」国籍の場合の準拠法について説明します。※本連載では、東京弁護士会法友会の編著書、『所有者不明の土地取得の手引―売買・相続・登記手続』(青林書院)の中から一部を抜粋し、不動産の相続について、相続人が外国人である場合や、被相続人が外国人である場合の対応について解説します。

ブラジルは相続統一主義、かつ住所地法主義を採用

 概 説

 

国際私法として,1942年9月4日大統領令第4657号「民法施行法(序法)」10条が挙げられる。同条には,「死亡又は失踪による相続は,財産の性質及び所在地にかかわらず,被相続人又は失踪者が住所を有した国の法に従う。」との規定がある。

 

ブラジルは動産,不動産の区別を行わない相続統一主義をとり,かつ住所地法主義を採用している。

 

そのため,日本に住所がある場合,通則法41条の反致の規定により日本の相続法が適用される。

 

被相続人の最終の住所がブラジルにある場合,ブラジルの法律が準拠法となる。

 

ブラジルでは2003年に新民法が施行されているので,それ以後は新民法が,それ以前は旧民法が適用される。

日本に住所がある場合は、日本の相続法が適用

⒜ 旧民法

 

法定相続人は,第1順位直系卑属,第2順位直系尊属,第3順位生存配偶者,第4順位傍系血族,第5順位国庫となる。

 

⒝ 新民法

 

新法では,生存配偶者を優遇する規定が新設され,生存配偶者は原則として常に相続人となる(ブラジル民法1829条)。具体的には,法定相続人は,第1順位直系卑属と生存配偶者,第2順位直系尊属と生存配偶者,第3順位生存配偶者のみが相続人,第4順位傍系血族,第5順位国庫となる。

 

調査方法

 

上述のとおり被相続人がブラジル国籍であっても,日本に住所がある場合は,日本の相続法が適用される。

 

ブラジルの相続法については,山北英仁『渉外不動産登記の法律と実務』(日本加除出版,2014)に解説されているので参照されたい。

本連載は、2017年5月9日刊行の書籍、『所有者不明の土地取得の手引―売買・相続・登録手続』から抜粋したものです。稀にその後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

所有者不明の土地取引の手引 ―売買・相続・登記手続

所有者不明の土地取引の手引 ―売買・相続・登記手続

東京弁護士会法友会

青林書院

全国に点在する所有者不明土地。手続上の諸問題につき、相続、売買、登記、税務等の実務上の論点を整理した手引の決定版! 取得したい土地の所有者の相続人が多数の場合や相続人の中に外国人がいる場合の対策についても解説。

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