今回は、「縄伸び」のために相続税評価額がアップした土地について、その対応などを見ていきます。※本連載は、税理士法人オフィスオハナの代表税理士・吉野広之進の著書、『土地評価に係る現地調査の重要ポイント』(税務研究会出版局)の中から一部を抜粋し、土地の現地調査の重要ポイントをやさしく紹介していきます。

登記簿では400㎡なのに、実際の面積は520㎡・・・

<西田君が土地の現地確認から帰ってきた>

 

祐子:西田さん、お帰りなさい。今日の現地確認はどうでした?

 

西田:うん、ちょっと困ってて・・・。登記簿では400㎡ってなっているのに、持参したメジャーで測ってみたら、実際は520㎡くらいありそうなんだ。3割も面積が増えそうなんだよ。

 

祐子:先日、所長に教わった「縄伸び」ってやつですね。

 

西田:そうなんだよ。「縄伸び」自体は、僕の責任じゃないけど、評価が3割も増えちゃうと、なんか責任感じちゃうんだよね。

 

祐子:でも、仕方ないですよね。西田さんが悪いわけじゃないんですから。それで、お客さんには伝えたんですか?

 

西田:うん。そうしたら、「近所の家が数年前に測量した時も、2~3割増えたって聞いていたから、この地域はそれくらい誤差っていうか縄伸びがあるのはわかっていたわ。」だって。

 

祐子:それなら、良かったじゃないですか。本人がわかっているなら、相続税の評価も、当然上がるって理解してもらいやすいですし。

 

西田:それがさぁ~。帰り際に「西田さん、土地の評価、できるだけ下げてくださいね。頼みますよ。」って言われてさ。

 

祐子:困りましたね。

 

西田:うーん、「縄伸び」しているのを気づかなかったことにして、登記の面積で評価しちゃうとか・・・。

 

祐子:そういう訳にはいきませんよ。それに、納税資金のために、その土地を売りに出すって話が出ているんじゃなかったんですか? 売りに出すときに正確な測量をしたら、3割「縄伸び」しているのもはっきりしちゃうし、大体、売るときは面積が大きい方がいいじゃないですか。

 

西田:そうだよねぇ・・・。

 

祐子:あっ、所長が帰ってきました。西田さん、所長に「縄伸び」の件、報告しないと!

広大地に該当すれば、評価額を下げられる可能性も

<高橋所長に報告した>

 

所長:そうか~。それは困ったね。でも、「縄伸び」しているなら仕方ないね。ところで、その土地は、どのような地域にある土地なんだい?

 

西田:駅から少し遠い、新興住宅地っていう感じのところです。

 

所長:その地域の、1軒当たりの土地の大きさって、大体どのくらい?

 

西田:そうですね。大体30坪、100㎡前後くらいだと思います。

 

所長:なるほど。評価対象地はどのくらいの広さなの?

 

西田:登記簿で400㎡です。現地での簡易測量では520㎡くらいです。

 

所長:戸建てに換算すると5軒分くらいかなぁ。

 

祐子:所長! もしかして・・・?!

 

所長:うん。広大地評価が使えるんじゃないかと思ってさ。

 

西田:あ、なるほど~!!

 

所長:広大地評価の条件は覚えているかい?

 

祐子:「広大地評価のフローチャート」ってありましたよね。最初が「大規模工場用地に該当するか?」ですよね。

 

西田:新興住宅地ですからね。大規模工場用地には、見えませんでした。

 

祐子:次は、たしか・・・。「マンション適地か、または既にマンション等の敷地用地として開発が終わっているか?」ですよね。

 

西田:容積率が300%以上の地域が「マンション適地」だから・・・周囲にはマンションどころか3階建てだって見当たらなかったなぁ~。

 

祐子:次の条件が、「その地域における標準的な宅地に比べて、著しく面積が広大か?」ですね。

 

西田:3大都市圏の市街化区域はおおむね500㎡以上が条件だったよね。「縄伸び」があることがわかって520㎡だからOKかな?!

 

祐子:その次が、「宅地として開発した場合に公共公益的施設用地、道路等が必要か?」でしたね。

 

西田:現地は、目の前の道路部分の間口よりも奥行の方がだいぶあったから、5軒建てるとすれば、道路を敷地内に敷設しないと無理かなぁ。

 

所長:「縄伸び」で面積が増えたことによって、広大地評価が適用できる可能性がでてきたってことだね。実際に広大地評価を適用するには、今話したことなどをしっかり確認する必要があるね。

 

西田:はい。「縄伸び」も含めて、まだ正確な確認は、これからですから!

 

所長:では、早急に相続人に会いに行こう。売却の予定があるのであれば、早々に測量をする必要があるだろうし、急げば申告期限までに、売却時の区画割り図とかも間に合うかもしれないね。

 

祐子:「縄伸び」がわかる前より面積は増えちゃいそうですけど、広大地評価が使えれば、最終的な評価額は減るかもしれませんね。

 

西田:「増えた」けど「減る」。なんか、ちょっと不思議な気がするけど「西田君、評価下げてね」って、言われたのが実現できるかも!

土地評価に係る 現地調査の重要ポイント

土地評価に係る 現地調査の重要ポイント

吉野 広之進

税務研究会出版局

土地の評価は千差万別です。評価してみたら、結果的に同額になる場合はありますが、すべての土地はそれぞれ違うものなのです。それだけに、土地の現地確認は、重要になってきます。「その土地が内包している問題点や特殊事情な…

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