今回は、相続開始から遺産分割、相続税納税までの流れを見ていきます。※本連載は、公認会計士・税理士で、経営塾「未来ネット」を主催する、税理士法人みらい・辻中修氏の著書『 よくわかる! 相続への対応 改訂増補版 』(三恵社)の中から一部を抜粋し、相続に関する基礎知識から実際の相続対策、国際税務の概要までやさしく解説していきます。

遺産分割にあたっては「遺産分割協議書」が必要に

①遺産分割の対象

遺産分割の対象となる財産は、被相続人が死亡時に有していた財産に係る権利義務のすべてです。

なお、相続開始後遺産分割までの間に相続人が勝手に財産を処分した場合、処分した財産に代わり、その相続人に対する代償請求権が遺産分割の対象となります。

 

②遺産分割協議

共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも協議により遺産を分割することができます(民法907条)。

なお、共同相続人に未成年者や判断能力の衰えている者がいる場合には、代理人や後見人制度があります。

 

イ、20歳未満の子供の場合、法定代理人として親または特別代理人の選任を行います。

ロ、認知症等で判断能力が衰えている場合には、法定後見人制度(補助人、保佐人、成年後見人)があり、状況に応じた後見人を選任します。

 

③遺言による遺産分割方法の規定

被相続人は、遺言で遺産分割の方法を定めたり、遺産分割の方法を第三者に委託したり、また相続開始から5年内の遺産分割を禁止することができます(民法908条)。

 

④遺産分割協議書

共同相続人間で遺産分割の協議が成立した場合には、所定の事項を記載した遺産分割協議書を作成し、各相続人が署名・押印します。

この遺産分割協議書に基づいて各相続財産の相続人が決定され、不動産登記、名義の変更がなされ、相続税の負担額が決定されます。

 

⑤家庭裁判所での遺産分割

共同相続人間の話し合いで遺産分割協議が整わない場合、相続人は家庭裁判所での遺産分割を請求できます。

遺産分割の遅れが相続人に「損失」をもたらす場合も・・・

⑥遺産分割協議と相続税の申告

イ、期限内申告と期限後申告

相続税の申告期限及び納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10ケ月以内です。この申告期限内に相続税の申告書を提出しなかった場合には、無申告となり、その後、相続税の申告書を提出した場合、その申告は期限後申告となり、納税額に対し無申告加算税と延滞税が課税されます。

 

ロ、遺産分割協議の遅れ

被相続人の遺産分割協議は、各相続人や受遺者の協議により行われます。人間の欲望は無限であり、また相続人等の背後には多数の親族がいます。このため、いつまでたっても遺産分割協議が成立せず、相続税の申告期限を過ぎてしまうことがあります。

 

また、相続財産は原則として相続開始時の時価で評価されます。このため、実際の遺産分割が相続開始時から乖離するにつれ、相続財産の時価も変動していきます。遺産分割の遅れは、税金負担ばかりでなく、財産価値の下落をとおして、相続人に損失をもたらす場合があります。

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    本連載は、2016年12月9日刊行の書籍『 よくわかる! 相続への対応 改訂増補版』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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