75歳以上の医療費の窓口負担は原則1割。高額療養費制度もあります。それにもかかわらず、日々の医療費の支払いに窮してしまう高齢単身世帯は少なくありません。いったいなぜでしょうか。77歳の女性が、必要な薬を受け取らずにいた理由とは。本記事ではFPオフィスツクル代表・内田英子氏がある親子の事例とともに、同居や備えがあっても生じる老後の孤立感と、高齢期の家計の落とし穴を考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
(※写真はイメージです/THE GOLD 60編集部)
「母さん、薬代が払えなかったの…?」〈年金月11万円〉77歳母の机で見つけた“期限切れの処方箋5枚”。1年ぶりの帰省で51歳息子が直面した「隠れ老後破綻」の悲鳴【FPが解説】
母の机で見つけた5枚の処方箋
「母さん、これ、どうしたの? もしかして薬、受け取ってないの?」
1年ぶりに帰省したBさん(51歳)は、机に置かれた処方箋に目を留めました。全部で5枚あり、発行日時はさまざま。数ヵ月前のものから先月のものまであります。母親のAさん(77歳)は持ち家で一人暮らし。どれも高血圧のため、定期的に通院している内科で出されたものでした。
「年金支給日までお金がなくて、お薬代払えなかったのよ。カードの支払いが思ったよりも大きくて。お薬はもうもらったから大丈夫」
「えっ、体は大丈夫なの?」
「なんともない。これまでもそう。先生には怒られるんだけどね」
母親は笑っていいます。どうやら、年金支給日前に通院があたると、薬の受け取りを先延ばしして、入金後に再受診……。そんなことを何度も繰り返していたようなのです。
「でも2,000円くらいどうにかならなかったの? 貯金もあるだろう?」
Aさんの年金は額面月11万円、手取りで約10万円ほど。貯金は300万円ほどあると、2年前に父親が亡くなったときに話していました。
「薬代は毎月払わないといけないのに、貯金は使えない。あんたには迷惑かけないからね」
母親からの思ってもいない返事にBさんは戸惑いました。母親の貯蓄を取り崩したくない気持ちはよくわかったものの、Bさんの胸には不安がよぎります。
「迷惑かけないからって……。それで本当に生活は大丈夫なんだろうか」。Bさんは答えが見つからず、しばらく立ち尽くしてしまいました。