母の机で見つけた5枚の処方箋

「母さん、これ、どうしたの? もしかして薬、受け取ってないの?」

1年ぶりに帰省したBさん(51歳)は、机に置かれた処方箋に目を留めました。全部で5枚あり、発行日時はさまざま。数ヵ月前のものから先月のものまであります。母親のAさん(77歳)は持ち家で一人暮らし。どれも高血圧のため、定期的に通院している内科で出されたものでした。

「年金支給日までお金がなくて、お薬代払えなかったのよ。カードの支払いが思ったよりも大きくて。お薬はもうもらったから大丈夫」

「えっ、体は大丈夫なの?」

「なんともない。これまでもそう。先生には怒られるんだけどね」

母親は笑っていいます。どうやら、年金支給日前に通院があたると、薬の受け取りを先延ばしして、入金後に再受診……。そんなことを何度も繰り返していたようなのです。

「でも2,000円くらいどうにかならなかったの? 貯金もあるだろう?」

Aさんの年金は額面月11万円、手取りで約10万円ほど。貯金は300万円ほどあると、2年前に父親が亡くなったときに話していました。

「薬代は毎月払わないといけないのに、貯金は使えない。あんたには迷惑かけないからね」

母親からの思ってもいない返事にBさんは戸惑いました。母親の貯蓄を取り崩したくない気持ちはよくわかったものの、Bさんの胸には不安がよぎります。

「迷惑かけないからって……。それで本当に生活は大丈夫なんだろうか」。Bさんは答えが見つからず、しばらく立ち尽くしてしまいました。