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キャンプにはまった67歳男性…3年で1,200万円費やした
まず購入したのは、焚き火台やアウトドアチェア、調理器具などでした。テントや寝袋も必要になり、道具を一つずつ買いそろえていきました。
「最初は、道具さえそろえれば十分だと思っていました。でもお店には色々な道具があって――」
動画で紹介されていた商品を調べ、評判がよければ購入する。実際にキャンプに出かけると、今度は別の道具が欲しくなる。そうして、少しずつ買い物が増えていきます。それでも、伊藤さんはあまり気にしていませんでした。
「もう妻もいませんし、何かあって困るのは自分一人なんで……」
キャンプは、伊藤さんにとって単なる暇つぶしではありませんでした。妻を亡くしてから感じていた寂しさが和らぎ、次の休日にどこへ行こうかと考えることが楽しみになっていたのです。
そして趣味はさらに加速。キャンプ動画と同様に流れてきたのが、キャンピングカーで全国を巡り、好きな場所で車中泊をしている人たち。
販売店で実車を見て、車内の設備や収納を確かめるうちに、購入への気持ちは固まっていきました。それでも、結構な金額です。
「中古車なら結構安く買えることが分かりました。それでも数百万円の買い物ですからね」
こうして手に入れたのは、350万円・中古のキャンピングカーでした。
伊藤さんは、以前にも増してキャンプに出かけるようになりました。車内で休憩や食事ができるため、遠方のキャンプ場にも足を運びやすくなります。行き先の選択肢が増えたことで、週末だけでなく、平日を含めた数日間の旅行も楽しむようになったのです。
一方で、キャンピングカーを所有するには、購入費用以外にもお金がかかります。ガソリン代や高速道路料金、駐車場代に加え、車検や整備などの維持費も必要です。キャンプ場の利用料や食費、道具の買い足しも続いていました。
それでも「今まで我慢してきたんだから」という言葉を免罪符にして、支出に対してはあえて無頓着でいたそうです。そんな伊藤さんを心配したのが長女。長女が単刀直入に家計について尋ねてきたといいます。
「お父さん、お金大丈夫? 結構、貯金も減っちゃったんじゃない?」
伊藤さんは「大丈夫だよ」と答えましたが、長女に促されて預貯金の残高を確認しました。そこで明らかになったのは、退職時に約2,500万円あった金融資産が、約3年で約1,300万円に減っていたという事実でした。
「3年で1,200万円……少々、散財しすぎだったでしょうか」
あまりの金額に、長女は引き気味だったといいます。それでも伊藤さんに後悔はありません。
「キャンプを始める前は色のない世界で生きてきました。妻がいなくなってからはなおさら。でも今は、毎日が楽しい。キャンプを通して友人もできました。まさか、この年になって新しく友人ができるなんて――」
とはいえ、これから年を重ねていくなか、無計画にお金を使うことはリスクでしかありません。また「何かあっても困るのは自分だけ」と思っていましたが、想像以上に子どもたちは伊藤さんのことを心配していました。
迷惑をかけるわけにはいかない――とこれからはきちんと家計管理し、適正な範囲で趣味にお金を使うと固く誓ったといいます。
内閣府『令和7年度 高齢社会対策総合調査(第10回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査)』によると、日本の男性高齢者で「親しい友人はいない」と答えた割合は45.3%。妻との死別後に趣味を通じて新たな友人を得ることは、生きがい(男性の48.7%が「趣味やスポーツ」で実感)の創出に繋がるでしょう。
一方で、老後の備えとして現在の資産が「足りない」「やや足りない」と感じている人は計56.7%に達します。心の充足感をもたらす趣味を楽しみつつも、長期的な家計管理とのバランスを保つことが安心な老後生活の鍵といえるでしょう。