定年退職後は、現役時代にできなかったことを楽しみたいと考える人もいるでしょう。長年、仕事や家族を優先してきた人にとって、自由な時間を自分のために使うことは大きな喜びです。一方、趣味や外出を楽しむ機会が増えれば、想定以上に支出が膨らむこともあります。ある男性の事例から、老後の趣味と老後への備えについて考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「退職したんだから、我慢する必要はないでしょ」〈年金月18万円〉〈貯金2,500万円〉67歳男性、3年で〈1,200万円の散財〉に長女も顔面蒼白 ※写真はイメージです/PIXTA

妻を亡くした定年男性…人生を変えた動画との出合い

「現役時代は家族のために働いてきたんです。退職したんだから、我慢する必要はないでしょ」

 

そう話す伊藤さん(仮名・67歳)は、地方自治体の職員として長年勤務し、定年を迎えたあとも再任用で65歳まで働きました。3年前に妻を亡くしてから一人暮らしです。独立した長男と長女は、それぞれ家庭を持ち、別の地方で暮らしています。

 

公的年金は月約18万円。持ち家のため、住宅ローンなど、目立った負債はありません。退職時には退職金と現役時代に積み立てた預貯金を合わせ、約2,500万円の金融資産がありました。

 

現役時代の伊藤さんは、仕事と家族を優先する生活を送っていました。休日も子どもの用事や自宅の雑用に追われ、自分の趣味にまとまった時間を使うことはほとんどなかったといいます。

 

「子どもたちの教育費もありましたし、家の維持費もそれなりにかかる。旅行にも行きたいとは思いましたが、老後への漠然とした不安から、いつか、いつかと先延ばしにしていました」

 

そんな伊藤さんにとって、退職後の生活は、ようやく自分の時間を取り戻せる機会でした。ところが、退職を目前にした65歳のとき、妻が病気で亡くなります。長年連れ添った妻を失った悲しみは大きく、しばらくは何をする気にもなれなかったそうです。

 

そんな伊藤さんを変えたのが、動画投稿サイトのキャンプ動画。自然のなかでテントを張り、食事を作り、夜には焚き火を囲む――炎を眺めながらゆっくり過ごす様子に、伊藤さんは惹かれていきました。

 

「元々インドア派なので、キャンプなんて考えたこともなかった。でも動画を見ているうちに、自分もやってみたいと思うようになりました」