「これから老後資金を貯めよう」夫婦で頑張ってきた矢先の悲劇

首都圏郊外にある家賃10万円のマンション。豊田修さん(仮名・53歳)と妻の朋子さん(仮名・52歳)は、ここで20年近く暮らしてきました。

二人とも、いわゆる就職氷河期世代です。修さんは大学卒業後に正規雇用の職を得られず、派遣や契約社員を転々としました。中小企業の製造部門に正社員として迎えられたのは30代後半のことで、現在の年収は約320万円です。朋子さんも非正規で働いた期間が長く、30代半ばで事務職の正社員になり、年収は300万円ほどでした。

賞与を含めた手取りは、二人合わせて月平均40万円あまり。生活費は月28万円で、これとは別に修さん名義で借りた教育ローンの返済が月2万円ほどあります。一人息子はこの春、大学を卒業し、独立しました。

教育費のかかる時期は貯蓄を取り崩す一方でしたから、預貯金は300万円ほどしか残っていません。教育ローンの残債も、約200万円あります。老後資金の準備が遅れていることは気になっていましたが、これからは教育費の負担が減ります。修さんと朋子さんは、二人で働き続ければ老後までにある程度の貯蓄ができるだろうと考えていました。

その矢先、朋子さんがくも膜下出血で倒れ、そのまま帰らぬ人となったのです。

葬儀を終えた修さんは、年金事務所に足を運びました。朋子さんは正社員として厚生年金に加入し、長く保険料を納めてきたので、遺族厚生年金がいくらかは出るはずだと考えていました。

ところが窓口で告げられたのは、修さんには受給権がないという説明でした。妻を亡くした夫が遺族厚生年金を受け取るには、妻が亡くなった時点で夫の年齢が55歳以上である必要があります。53歳の修さんは受け取れません。

手取り21万円に対して、家賃10万円。朋子さんが亡くなって食費などは減ったものの、教育ローンの返済は続きます。

「このままでは老後資金を貯めることもままならない」

修さんは20年暮らした部屋を引き払い、家賃6万円台のアパートに移ることに決めました。