親が高齢になると、年金だけでは生活費を賄えず、子どもが仕送りをするケースもあります。親の暮らしを支えたいと思う一方、援助する側にも住宅費や教育費など、自分の家庭の支出があります。毎月の仕送りが当たり前になると、やめたくても言い出せなくなることもあります。親を思う気持ちと、自分の家計を守ること――その両立に悩む家族も少なくありません。ある親子の事例から、親への仕送りの在り方を考えます。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「母さん、ごめん」〈年金月10万円・72歳母〉に〈月5万円の仕送り〉を続けてきたが…45歳会社員の息子、とうとう迎えた限界と〈母の言葉〉に涙 ※写真はイメージです/PIXTA

親への援助と自分の家計、両立のために必要なこと

そんなある日、大輔さんは久しぶりに実家を訪れます。今後の仕送りのことを話すためでした。

 

「母さん、仕送りのことなんだけど……」

 

そう切り出すと、恵子さんは一冊の預金通帳を取り出します。それは毎月の仕送りが振り込まれていた口座のものでした。しかし中を確認すると、生活費として引き出された金額はほとんどありませんでした。

 

「もとはあなたたちのお金だから、私が持っているより、必要なら使ってほしいのよ」

 

恵子さんは、食費を切り詰め、衣服や日用品も必要最低限のものにして暮らしてきたといいます。年金だけで生活できるように工夫し、息子からの仕送りにはできるだけ手をつけないようにしていました。

 

「いつか、あなたたちのほうでお金が必要になることもあるでしょう。結衣ちゃんの進学だってあるしね」

 

大輔さんは、母がそこまで考えていたとは知りませんでした。仕送りを受け取るたびに「ありがとうね。本当に助かってる」と話していた恵子さん。大輔さんは、その言葉どおり、送ったお金が生活費として使われているものだと思っていました。

 

「母さん、ごめん。こっちも余裕がなくなってきて、仕送りをどうしようか考えてた」

 

そう打ち明けると、恵子さんは「そりゃそうよ。あんたのときも大変だったんだから。これからはもっとお金がかかるんだから、頑張りなさいよ」と笑って返しました。

 

母はすべてお見通しだったわけです。

 

「母には、本当、かないません……」

 

母の優しさに思わぬ形で触れ、自然と涙が出てきたといいます。

 

厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』によると、全世帯のうち「親への仕送り」を行っている世帯は1.99%。50世帯に1世帯の割合です。仕送りを行っている世帯に限ると、仕送り額が家計支出の「10%以上」を占める割合は79.3%にのぼり、支援を行う現役世帯にとって決して軽微な負担ではない実態が浮かび上がります。

 

特に教育費や住宅ローンが重なる40代世帯主では、貯蓄が減った理由として「日常の生活費」(76.2%)や「教育費等の一時的支出」(40.0%)が高く挙げられています。

 

だからこそ大切なのは、「親孝行だから」と無理を抱え込まず、互いの家計状況や将来の暮らしについて親子でオープンに話し合うこと。義務感だけで支援を続けるのではなく、お互いの生活を守るための具体的なラインや支援の形を定期的にすり合わせることが求められます。