【元介護職員のFPが解説】「手厚いケア」の期待と現場にギャップが生じる原因

なぜ、高額な費用を払って入居した高級老人ホームで、このような問題が起こってしまうのでしょうか。理由は大きく2つあります。

1. 期待値の高さと実際の体制の乖離

高級老人ホームに入居する方のなかには「高額な費用=マンツーマンに近い手厚い個別ケアやホスピタリティが買える」というイメージを持ちがちです。しかし、どれほど設備が豪華で費用が高額であっても、常にマンツーマンの対応が受けられるとは限りません。実際のケアの手厚さはホームの種類や契約内容、時間帯ごとの職員配置によって異なります。人員配置基準を上回る職員を配置するホームもありますが、複数の入居者への対応が重なれば、待ち時間が生じることもあります。特に夜間や利用者のケアが集中する時間帯(起床・食事・入浴時など)は、1人のスタッフが複数の対応を掛け持たざるを得ないのが現状です。

2. 介護業界全体の人手不足と教育の課題

現在、介護業界全体で慢性的な人手不足が続いています。高級老人ホームであっても例外ではなく、質の高い人材を確保・定着させることが容易ではありません。その結果、スタッフ個人のスキルやマナーのばらつき、業務に追われることによる心のゆとりの欠如が言葉遣いや対応の粗さとなって現れてしまうことがあります。

老人ホーム入居後に後悔しないためのポイント

ヤヨイさんのように、高級老人ホーム入居後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、検討段階や入居初期に意識しておきたいポイントがあります。

「夜間・時間帯別の具体的な人員体制」を確認する

見学時には、日中のスタッフ数だけでなく「夜間に看護師や介護士が何名体制で常駐しているか」「ナースコールの平均対応時間はどのくらいか」など、具体的な数字や運用状況を質問しておきましょう。

人員配置の比率が示されていても、それが常勤換算による数値であれば職員の勤務時間を常勤職員の人数に換算したものです。各時間帯に、その比率の職員が居合わせるという意味ではありません。

「手厚さ」の範囲と限界を契約前に把握する

「どこまでが基本サービスに含まれ、どこからが個別対応(または追加オプション)になるのか」の境界線を明確にしておくことが大切です。

不満や意見は「具体的な事実」として施設側に伝える

「対応が悪い」と感情的に伝えるのではなく、「〇月〇日の〇時頃、ナースコールをしてから〇分待った」「このような言葉遣いをされて悲しかった」など、具体的な事実を添えて施設長やケアマネジャーに相談しましょう。施設側の改善のきっかけや、スタッフ配置の見直しにつながりやすくなります。