社宅暮らしで築いた資産2億円…〈入居一時金6,000万円〉の高級老人ホームを選んだ70代夫婦

大手企業で働いてきたマサヒコさん(仮名・76歳)と、共働きを続けてきた妻・メグミさん(仮名・73歳)。現役時代はマサヒコさんの社宅で暮らし、退職後も賃貸住宅を利用していました。

持ち家の購入に多額のお金を使う代わりに住居費を抑え、毎月の貯蓄と長期の分散投資を継続。共働きの収入に夫婦の退職金も加わり、入居を検討した時点で金融資産は2億円に達していました。公的年金の手取りは夫婦で月35万円です。

「若いころは節約してきた。老後は、安心と楽しみにお金を使いたい」

2人が選んだのは自立した人も入居でき、介護が必要になった際の対応もしている高級な介護付き有料老人ホームでした。

広々とした夫婦用の居室、庭園を望むレストラン、音楽サロンにテニスコート。見学時には職員が入居者に対して丁寧に声をかける姿も印象的でした。

入居一時金は1人3,000万円、夫婦で合計6,000万円。管理費や食費などの月額費用は2人で45万円です。

年金との差額は月10万円、年間120万円。医療費や将来の介護費、私的な支出は別でかかりますが、一時金を払っても金融資産は1億4,000万円残ります。2人は費用の上昇も見込みつつ、十分に対応できると考えました。

入居から3年後、高級老人ホームで起きた異変

「高いお金を払ったけれど、ここを選んで正解だったね」

入居後の生活は期待通りでした。メグミさんは音楽サロンに通い、マサヒコさんは囲碁の仲間を見つけました。食事の準備や掃除から解放され、2人で庭園を散歩する時間も増えました。

ところが、入居から3年後。運営会社から「経営状況の悪化に伴い、他社への事業譲渡を含む対応を検討している」という旨の通知が届きました。

説明会では、入居率の伸び悩みや人件費・食材費・水道光熱費などの高騰が説明されました。しかし、譲渡先も今後の具体的な運営体制も決まっていません。

その後、顔なじみの介護スタッフの退職が続きました。音楽イベントは月2回から1回になり、レクリエーションの中止も増えました。食事の品質は下がり、配膳を待つことも多くなりました。

この事例では、経営悪化に伴ってサービスが低下していますが、事業譲渡そのものが必ず悪い結果を招くわけではありません。新たな運営会社のもとで経営やサービスが立て直される場合もあります。

確認すべきなのは入居契約、前払金の返還義務、職員体制などが、どのように引き継がれるかです。