親の高齢化に伴い、子ども世帯が生活の支援や介護を担うケースは少なくありません。しかし、親族だからといって、どこまで負担するのが当然なのでしょうか。金銭面の援助、日々の家事、通院の付き添い――家族の間で明確な取り決めがないまま、負担が一人に偏ることもあります。ある家族の事例から、同居家族の支援や介護の在り方について考えます。
「お義父さん、こんなこと言いたくないのですが…」月収38万円・44歳嫁が、同居する義父に突きつけた「譲れない条件」 ※写真はイメージです/PIXTA

義父との同居で、44歳の妻に偏った負担

会社員の伊藤恵さん(44歳・仮名)。月収は38万円。夫の大輔さん(47歳・仮名)と高校生の息子と暮らす恵さんは、義父との同居生活における負担の大きさに悩んでいました。

 

義父の伊藤茂さん(76歳・仮名)は、妻を亡くした後も一人で暮らしていました。しかし、年齢を重ねるにつれ、買い物や通院が負担になってきたといいます。夫から「親父も一人では大変だから、うちで一緒に暮らせないか」と相談されたのは、半年前のことでした。

 

恵さんは迷いました。仕事を続けながら、家事に加えて義父の世話まで担えるのか。不安はあったものの、夫の親を支えたいという気持ちもあり、同居に同意します。

 

当初、夫は「できることは自分もやる」と話していました。ところが、実際に暮らし始めると、状況は違っていました。

 

義父の食事は家族と別に用意することが増えました。通院の日程を確認し、必要なものを買いそろえるのも恵さん。仕事から帰れば夕食の支度が待っています。義父から頼まれる用事も、いつの間にか恵さんが対応するようになっていました。

 

「親父に頼まれたことくらい、やってあげればいいじゃないか」

 

夫に相談しても、返ってくるのはそんな言葉でした。夫自身も仕事が忙しく、休日は疲れているといいます。義父の生活を支える必要性は理解していても、その負担を誰が引き受けるのかという話になると、具体的な分担は決まりません。必然的に、その負担のほとんどを恵さんが担うことになっていたのです。

 

厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』によると、65歳以上の者のいる世帯は全世帯の50.2%。また、要介護者と同居する主な介護者の性別割合は女性が63.5%を占めており、家庭内での介護や生活支援の担い手が今なお女性に偏りがちな実態がうかがえます。

 

明確な要介護認定に至らない段階であっても、通院の付き添いや日用品の補充といった細かな「日常の世話」の負担が女性一人に集中してしまう構図は共通しています。

 

恵さんの場合、義父は日常生活のすべてに介助が必要なわけではありません。むしろ、ほとんどのことを自分でできます。それでも細かな用事が積み重なっていくと、大きな負担になります。