日本の高度経済成長史から読み解く「新興国投資」の目利き術
フロンティア市場(ジョージア・エジプト・ナイジェリア・ドバイ)での
年利10%の定期預金事例を検証…金利と為替が資産額に与えた影響
――海外投資には数千万円単位の資金が必要だと思われがちですが、少額から始めた事例もあるのでしょうか。
海外投資は、必ずしも富裕層だけのものではありません。ただし、資金の規模に応じて、投資対象やリスクの取り方を考える必要があります。
たとえば、1億円の資産を年3%で運用できれば、税金や手数料などを考慮する前の計算では年間300万円の収益になります。一方、手元資金が100万円の場合、短期間で大きな利益を得ようとして、リスクの高い投資に資金を集中させてしまうことがあります。資産規模にかかわらず、投資目的や資金計画に合った運用方法を選ぶことが大切です。
弊社では、8年前からジョージアの現地銀行を活用した年利約10%の定期預金サービスを提供してきました。以前、派遣社員として働くクライアントから相談を受けたことがあります。当時、手元の貯金は約100万円だったといいます。
私たちは、一度に大きな利益を狙うのではなく、ジョージアの銀行預金を利用しながら、毎月の給与から無理のない範囲で資産形成を続ける方法を提案しました。
――その100万円は、運用によってどのように変化したのでしょうか。
その方は、ジョージアの銀行預金を利用しました。弊社が把握している運用事例では、現地通貨建てで利息が積み上がったことに加え、為替相場の変化もあり、当初100万円だった資産は、円換算で約300万円になりました。
海外預金では、現地通貨で得られる利息と、円に換算した際の為替レートの両方が資産額に影響します。この事例では、預金金利による増加に加え、円安によって円換算の資産額が押し上げられました。
一方、現地通貨建ての預金残高が増えていても、その通貨が円に対して下落すれば、円換算の資産額は減ることがあります。海外預金を検討する際には、預金金利だけでなく、為替変動も含めて運用結果を考える必要があります。
弊社では、資産が増えた場合、その全額を次の投資に回すのではなく、一部を預金などに残し、残りを別の資産に振り分ける考え方もお伝えしています。たとえば、資産の一部を預金として保有し、残りをエジプトやナイジェリアの不動産・株式などに分散する方法です。投資先を増やすことで、それぞれの市場や商品に異なるリスクがあることも踏まえ、資産配分を検討します。
多様なクライアント層が実践する「ポートフォリオ」の考え方
――開業医や中小企業の経営者からは、どのような運用相談が多いのでしょうか。
経営者や開業医の方々からは、会社や医療法人に残っている余剰資金をどのように活用するか、という相談があります。本業に必要な資金を確保しながら、資産をどのように管理するかが課題になります。
医療法人については、実施できる業務や資金の使途に一定の制約があります。海外の医療事業への投資についても、事業の内容や実施方法などを確認したうえで判断する必要があります。
弊社がお手伝いした事例として、約5億円の余剰資金があった医療法人から相談を受け、ドバイで売却に出ていたクリニックの買収を支援したことがあります。医療分野という本業との関連性を踏まえ、海外の医療事業に資金を活用する取り組みでした。
海外の医療施設を取得する場合、現地の法制度や許認可、運営体制、買収価格、収益見通しなどを確認する必要があります。買収後も、患者数や運営費用などによって収益は変動します。海外事業への投資では、取得時の条件だけでなく、買収後の運営まで見通して資金計画を立てることが重要です。
――法人資金を運用する際、ポートフォリオの構築で重視すべきポイントは何でしょうか。
重要なのは、資金が必要になったときに、どの程度の期間で現金化できるかという点です。不動産は売却に時間がかかることがあり、希望する価格で売れるとも限りません。法人では、給与や仕入れ、設備投資などに必要な資金を確保しておく必要があるため、運用資金をどの程度確保できるかが重要になります。
弊社では、ナイジェリアの債券なども選択肢として紹介しています。現在、弊社が案内しているナイジェリア債券には、年利約15%の利回りが提示されているものがあります。こうした債券は利息収入が期待できる一方、発行体の信用状況や通貨の変動などによって、元本や円換算の資産額が減る可能性もあります。
また、金融商品であっても、必要なときに希望する価格で売却できるとは限りません。債券の種類や市場の状況によって換金のしやすさは異なります。利回りだけで判断せず、発行体の信用力、償還までの期間、売却条件などを確認することが大切です。
個人でも法人でも、資金を使う時期を踏まえて運用額を決めることが、ポートフォリオを考えるうえでの基本になります。
海外資産運用を始める前に確認したいポイント
――これから海外分散投資を検討する読者に向けて、確認しておきたい注意点を教えてください。
投資を検討するときには、どの程度の利益が期待できるかに目が向きがちです。しかし、投資を続けるためには、想定どおりに運用できなかった場合の対応も考えておく必要があります。
たとえば、ドバイの不動産価格が下落したり、賃貸需要が弱まったりすることも考えられます。手元資金に余裕があれば、保有を続けるという選択肢もあります。一方、借入金の返済負担が大きい場合には、売却を急がざるを得なくなる可能性があります。
ただし、長く保有すれば必ず価格が回復するわけではありません。物件の収益性や維持費、借入金の返済条件などを踏まえ、保有を続ける場合と売却する場合の両方を検討しておくことが大切です。
海外資産への投資では、投資先の国や商品に応じた確認も欠かせません。預金であれば、預入先の金融機関や預金保護の対象、通貨、預入期間、解約条件などを確認します。債券であれば、発行体の信用力や償還条件、売却の条件などが確認事項になります。不動産の場合は、現地の法制度や権利関係、維持管理費、売却時の条件なども把握しておく必要があります。
海外に資産を分散することは、投資先を広げる方法の一つです。ただし、分散すればすべてのリスクを避けられるわけではありません。投資先によっては、為替変動に加え、政治・経済情勢や制度変更など、国内資産とは異なるリスクを負うことになります。
弊社では、ジョージアやドバイを含む市場での資産管理と、エジプトやナイジェリアなどの成長市場への投資を、それぞれ異なる選択肢として紹介しています。大切なのは、利回りや成長性だけで判断せず、投資先の特徴とリスクを理解したうえで、自分の資金計画やリスク許容度に合った方法を選ぶことです。
日本の高度経済成長史から読み解く「新興国投資」の目利き術
フロンティア市場(ジョージア・エジプト・ナイジェリア・ドバイ)での
