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「部長、ごちそうさまです」…断れなかった元営業部長
「今さら、金がないなんて言えないでしょう」
そう話すのは、大手機械メーカーで働いていた高橋浩さん(67歳・仮名)。現役時代のラストは営業部長。取引先との会食や部下との飲み会では、自分が多めに支払うことも珍しくありませんでした。年収は1,000万円近くあり、定年時には2,800万円の退職金を手にしました。
65歳で退職した後、収入は年金のみ。高橋さんの年金は月約19万円。妻の年金を合わせれば、夫婦で月約29万円です。住宅ローンは完済し、子どもたちも独立しています。日々の暮らしに大きな不自由はありませんでした。
そんな高橋さんが退職後も続けていたのが、元同僚や後輩との付き合いです。退職してしばらくすると、かつての部下から連絡が入るようになりました。
「久しぶりに集まりませんか。高橋さんにも来てほしいんです」
誘われるとうれしくなり、飲み会には積極的に参加しました。店選びを任されると、少し高めの店を予約することもあったそうです。会計の際、後輩から「部長、ごちそうさまです」と言われると、つい財布を出してしまいます。
「現役時代からの付き合いですし、年下に払わせるのもどうかと思っていました。退職したからといって、急に態度を変えるのも格好悪いでしょう」
一度の飲み会で使う金額は、数万円程度。高橋さんにとって、それほど大きな出費には感じられませんでした。しかし、飲み会が月に何度かあることもありました。ゴルフに誘われれば参加し、帰りに食事をすれば、さらに費用がかかります。
妻の恵子さん(65歳・仮名)は、以前から気になっていました。
「もう会社の部長ではないのだから、そこまで付き合わなくてもいいんじゃない? 」
そう言われても、高橋さんは「昔からの仲間だから」と取り合いませんでした。
総務省の「家計調査報告」によると、2025年の65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、実収入は月25万4,395円、可処分所得は22万1,544円。一方、消費支出は26万3,979円に上ります。平均的な世帯でも、可処分所得だけでは毎月の消費支出を賄えていない計算です。交際費や趣味に使うお金を別枠で考えていると、生活費以外の支出が家計を圧迫することもあります。
高橋さん夫婦も、毎月の生活費は把握していました。しかし、交際費やゴルフ代については、年間でいくら使っているのかを計算したことがありませんでした。