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父の預金3,000万円は、どこへ消えたのか
東京都内に住む会社員の高橋久美子さん(48歳)は、父・博さん(78歳)の死後、弟2人と遺産について話し合うことになりました。
博さんは妻に先立たれ、自宅で1人暮らし。長男の大輔さん(51歳)は実家から車で30分ほどの場所に住み、父の通院や銀行の手続きを手伝っていました。次男の健太さん(45歳)は地方勤務。久美子さんも月に1度ほど実家に帰っていました。
博さんには、退職金などを含めて3,000万円ほどの貯金がありました。贅沢を好まず、大きな病気の治療や介護にお金を使ったわけでもありません。
「父の貯金なら、ほとんど残っていると思っていました」
金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査2025年(単身世帯調査)』によると、70代(金融資産保有世帯)の平均金融資産保有額は1,877万円(中央値900万円)。博さんの3,000万円という貯金額は同年代の平均と比較しても十分にまとまった資産であり、大きな支出もなかったことから、長女の久美子さんが「貯金はほとんど残っているはずだ」と当然のように考えていたのも無理はありません。
ところが、相続のために通帳を確認すると、貯蓄用口座の残高は約300万円。
「お父さんのお金、3,000万円くらいあったよね?」
久美子さんが尋ねると、大輔さんは「生活費でかなり使ったんじゃないか」と答えました。
しかし、久美子さんには納得できません。
父は手取り月16万円ほどの年金を受け取っていました。持ち家で1人暮らし。しかも年金を使い切らず、受取口座には約100万円が残っていました。
貯蓄用口座を見ると、亡くなる1年半ほど前から、数十万円から100万円単位の現金出金が繰り返されています。
大輔さんは父の通帳とキャッシュカードを預かり、必要なときに現金を下ろしていたといいます。
「これ、何に使ったの?」
久美子さんが聞くと、大輔さんは「父に頼まれて下ろした」と説明しました。
ところが、別の疑問も浮かびます。
久しぶりに会った大輔さんは、以前乗っていた国産車から外国メーカーの高級車に乗り換えていました。服装や時計も以前より高価なものが増えています。
「お兄ちゃん、最近ずいぶん生活が変わったよね」
久美子さんが何気なく尋ねると、大輔さんは「仕事がうまくいっているから」と答えました。
しかし、大輔さんが会社員として得ている収入を考えると、久美子さんには少し気になる変化でした。
相続では、亡くなった人の預貯金だけでなく、生前にどのようなお金の動きがあったのかも問題になることがあります。国税庁も相続税の申告や調査で、預貯金などの金融資産を確認しています。
3人は、博さんの出金記録を一つずつ確認することにしました。