FIREするなら「資産額」だけでなく生涯のキャッシュフローを考える

では、小松さんはどうすればよかったのでしょうか。50代でFIREを検討するなら、少なくとも次のような支出を分けて考える必要があります。

  • 日常の生活費
  • 物価上昇による生活費の増加
  • 税金・社会保険料
  • 住宅や車などの大型支出
  • 医療・介護など高齢期の支出
  • 相場下落時にも生活費を確保できる予備資金

小松さんの場合、55歳で会社を辞めたため、原則65歳の年金受給開始まで10年間あります。

そのためFIRE前には、「6,000万円ある」という残高だけを見るのではなく、65歳まで、その後70歳、80歳、90歳と資産残高がどう変化するのか、キャッシュフロー表を作って確認したいところです。

そもそも「年4%で運用できる」という想定だけでFIREの可否を判断するのは危険です。平均では4%のリターンを得られたとしても、毎年4%ずつ増えるわけではありません。退職直後に相場が下落し、資産が値下がりした状態で生活費を取り崩さなければならないこともあります。物価上昇や臨時支出、運用がマイナスになるケースも含め、複数の条件でシミュレーションしておきたいところです。

もうひとつ考えたいのが、完全に仕事を辞める必要があるのかということです。たとえば月8万円分でも働けば年間収入は96万円となります。その収入があれば、資産から取り崩す金額を圧縮できます。

就業のメリットは収入面だけではありません。仕事を続けていれば、いざというときに勤務日数を増やしたり、別の仕事を探したりするハードルも、長期間仕事から離れた場合より低くなるでしょう。

小松さんが後悔したのも、FIREそのものというより、「働かないこと」をゴールにして、収入を得る選択肢まで手放してしまったことなのかもしれません。

松田聡子
CFP®

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