住宅ローンは完済済みで、夫婦合わせて月25万円の年金がある――。一見すると年金のみでも問題なく暮らせそうですが、年金のみの収入に不安を感じてアルバイトをする人もいます。平均以上の年金を受給していながら「お金が足りない」と悩む高齢者は、一体何にお金を使っているのでしょうか。群馬県の一軒家に夫婦で暮らす70代男性の事例から、食費や光熱費といった基本生活費以外の「家計をじわじわ圧迫する支出」について考えます。
「お金があるのは嘘じゃない、けど…」夫婦合わせて月25万円の年金で暮らす77歳男性、住宅ローン完済済みでも〈コソコソ週2のバイトを続けるワケ〉
8人の孫に合計4万円のおこづかいをあげる
群馬県の一軒家で妻と二人暮らしをする、川野与太郎さん(仮名・77歳)。普段は夫婦2人でまったりと過ごしていますが、子どもたちが家族連れで帰省すると一瞬にして家中が大にぎわいになります。
それもそのはず。3人の子どもたちは全員結婚しており、与太郎さん夫婦には合計8人の孫がいるのです。孫たちはみんな与太郎さんのことが大好きで、家に着くなり「じぃじ~!」と嬉しそうに駆け寄ってきます。
孫たちが遊びに来ると、与太郎さんはいつも8人を連れてスーパーに行くのが日課です。騒いだり走り回ったりせずにお菓子コーナーを一周する姿に誇らしくなった与太郎さんは、孫たちに「一人1,000円まで好きなものを買っていいぞ!」と大盤振る舞いをしてしまいます。「本当~!?」と目を輝かせつつ、「でもそんなに食べきれないからちょっとで大丈夫!」とけなげにお菓子を選ぶ孫たちも、これまたかわいくて仕方がないのです。
お菓子を買ってあげるだけでなく、帰り際にはおこづかいも渡しています。ケンカになるのを防ぐため、金額は孫の年齢にかかわらず一人5,000円。合計で4万円のおこづかいを用意しています。
長女と次女が、「お父さん、気持ちはありがたいんだけど、本当にいいの……?」と心配そうにたずねます。
「じぃじはお金、どれくらい持ってるの~?」
「じぃじのお金? そうだなぁ、いっぱいあるよ」
孫にはいい顔を見せたい。そんな気持ちから、与太郎さんはつい太っ腹アピールをしてしまいます。
おこづかいをあげるため、足りない分はアルバイト
総務省統計局『家計調査報告書 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)における平均可処分所得は22万1,544円です。
与太郎さんの年金は夫婦合わせて月25万円のため、平均可処分所得は上回っています。また、住宅ローンは完済済みのため、家賃もかかりません。しかし、少なくとも年に1~2回の頻度で4万円が出ていくことを考えると、年金だけでは心もとなさがあります。
そのため、与太郎さんは近所の業務用酒販店で週2回のアルバイトをしています。「お金が足りないのでは」と心配されたくないので、アルバイトをしていることは子どもにも孫にも秘密です。「お酒はスーパーで買うだろうし、ここなら近くに住んでいる娘も来ないだろう」と考え、現在のバイト先を選びました。
そんなある日、与太郎さんがいつものように店内で品出しをしていると、背後から声をかけられます。
「お父さん……?」
振り向くと、次女が驚いた表情で立っていました。その隣には7歳の孫・しゅん君もいます。話を聞くと、次女の夫から「出張先で飲んだ地酒がおいしかった」という話を聞き、この店なら売っているかもしれないと思って来てみたのだそうです。
しゅん君は、作業着の与太郎さんを不思議そうに見つめています。
「アルバイトをしている姿なんて見せたくなかった。“お金持ちのじぃじ”でいたかったのに、孫に勘づかれてしまっただろうか……」
孫に仕事姿を見られたことに大きく動揺した与太郎さんでしたが、精いっぱい何も気にしていない表情を作って2人と接しました。