パートをしながら、週5日で小学生の孫を預かる

「いってらっしゃい」

早朝の勤務に出かける夫に、町田かおるさん(仮名・70歳)はリビングから声をかけます。

かおるさんの夫は、会社を定年退職したあとに介護施設に再就職しました。現在は契約社員としてフルタイムで働いています。かおるさん自身も、近所のスーパーで週4日・1日4時間のパート勤務をしています。出勤時間は午前10時のため、朝は比較的ゆっくりできるのがありがたいそうです。

トーストとホットカフェオレで朝食を済ませたかおるさんは、支度を済ませて9時40分に家を出ます。10時~14時の勤務を終えて、家に帰ってくるのが14時半頃です。

かおるさんが働いているスーパーは学生バイトが多く、テスト期間や就職活動などで人手が足りなくなることがしばしば。今日も店長から「町田さん、今日だけでも残業できたりしませんか?」とお願いされましたが、申し訳ない気持ちで断りました。

「本当は残業だってしたい。もっとお店の力になりたい」
 

そう思っていても、かおるさんには定時で帰らなければならない理由があります。それは、小学校2年生の孫・海斗くん(仮名)のお世話です。

海斗くんは、かおるさんの長男の子どもです。長男はかおるさんの家から徒歩10分圏内の場所にマイホームを建て、妻と海斗くんの3人で暮らしています。長男夫婦はどちらも正社員で多忙を極めているため、平日は週5日、学校から帰ってきた海斗くんを20時頃過ぎまでかおるさんの家で預かっています。
 

「いつまで働くつもりなの?」息子からの冷ややかな反応

いつものようにかおるさんが仕事を終えて帰ろうとすると、店長から声をかけられました。

「実は、藤堂さんがぎっくり腰になってしまって、しばらくお休みすることになったんです」

藤堂さんは、お店のなかで一番古くから在籍しているパートの女性です。仕事ができて面倒見がよく、従業員からとても頼りにされていました。

「藤堂さんにお願いしていた夕方前の発注業務を、従業員で手分けして担当することになりまして……。でも、水曜日だけはどうしても人手が足りなくて困っているんです。町田さん、水曜日だけでいいので、15時30分までの勤務をお願いできませんか?」

困り果てた様子で頭を下げる店長を見て、かおるさんは悩みながら「家族と相談してみます」と答えました。

その日の夜、かおるさんは長男にスーパーでの出来事を話します。

「というわけで、水曜日だけ15時半まで働かせてほしいの。そうなるとカイくん(海斗くん)が学校から帰ってくる時間に間に合わないから、水曜だけ学童に預けたりできないかしら」

「藤堂さんが職場に復帰する間だけだから」と念を押して伝えましたが、長男の反応は冷ややかなものでした。

「そもそも母さんはいつまで働くつもりなの? 父さんだってフルタイムで働いてるんだし、早く仕事をやめて海斗のことに専念してもらえるとありがたいんだけど」

長男が言うように、かおるさんの夫には月26万円の収入があります。貯金は夫婦で1,500万円ほどで、長男のマイホーム費用として立て替えている1,000万円を合わせると、預金額は2,500万円になります。かおるさんの月8万円のパート代がなくても、おそらく生活には困りません。

しかし、かおるさんは長男の言葉に首を縦に振ることはできませんでした。