外来、手術、研究…乳腺外科医はどう働く? 医学部に進んだ女性医師のいま

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外来、手術、研究…乳腺外科医はどう働く? 医学部に進んだ女性医師のいま
(※写真はイメージです/PIXTA)

文部科学省の「令和7年度 医学部医学科の入学状況」によると、2025年度に全国の医学部医学科を受験した女性は5万3,917人。入学者9,218人のうち女性は3,780人で、全体の41.0%を占めました。受験者数、入学者に占める女性の割合ともに、過去10年で最高水準となっています。では、医師になった女性たちは、実際にどんな仕事をし、どんな毎日を送っているのでしょうか。今回お話を伺ったのは、2年間の浪人生活を経て医学部に合格し、現在は大学病院で乳腺外科医として働くHさん。外来や手術など乳腺外科医としての業務にあたる一方、研究にも取り組んでいます。メディカルラボでの受験生活から、乳腺外科を選んだ理由、現在の仕事や職場環境まで伺いました。仕事と生活のバランスは、もちろん女性医師だけの問題ではありません。Hさんのこれまでの歩みを通して、医学部受験の先にある医師の仕事やキャリアについて見ていきます。

中学校での授業をきっかけに医師を志す

──まず、現在のお仕事について教えてください。

 

現在は乳腺外科医として、外来や手術、病棟業務、入院患者さんの管理などをしています。週に1回ほど研究日があり、それ以外は外来や手術が中心です。大学病院で自分の外来を担当することもありますし、乳腺外科の常勤医がいない病院へ外勤に行き、乳腺外来を担当することもあります。

 

そのほか、学生さんのレポートを見たり、指導に携わったりすることもあります。休みの日に外勤で救急外来の当番を担当することもありますね。

 

──外来や手術など以外にも、研究や学生指導など、さまざまなことをされているのですね。それでは、そもそも医師を目指したきっかけは何だったのでしょうか?

 

最初に医師になりたいと思ったのは、中学生のときです。社会科の授業で、貧困地域の医療事情について学んだことがきっかけでした。日本だったら当たり前に受けられるような医療を、お金がないために受けられない子どもたちがいると知ったんです。

 

それなら、日本である程度お金を貯めて、自分が無償で医療を提供できるようなことをしたいと思ったのが、医師を目指した最初のきっかけでした。あくまできっかけなので、今は全然違うことをしていますけどね。

浪人2年目で、ようやく「受験生になった」

──本格的に医学部受験に向き合うようになったのは、いつ頃でしたか。

 

自分で「受験生をしているな」と思ったのは、浪人2年目以降ですね。浪人1年目までは、努力の仕方がわかっていなかった感じがあります。

 

──どのようなところに課題があったのでしょうか。

 

私は小中学校が国立大学の附属で、高校は県立の高校に進学しました。中学まではそれほど勉強をしなくても、なんとかなってしまっていたんです。

 

自分で努力をして、「このレベルまで到達するためには、これをしなくてはいけない」という感覚がないまま、適当にやってもそこそこ点が取れる、という感じでした。でも、高校に入ると、さすがにそれでは通用しなくなりました。

 

どんなふうに努力すれば勉強で点が取れるのか、ということが自分のものになっていなかったんですよね。そしてそのまま高校生活をぼんやり過ごして、浪人1年目に入ってしまいました。

 

──浪人1年目はどのような状況でしたか。

 

実家を離れたこともあって、生活もかなり適当になってしまって。本当の意味で「点を取りにいく」という勉強ができていなかったと思います。教科書や課題を少しやればいい、という感覚でした。

 

自分のどこがダメなのか、何をすればどのくらい点が取れるのか、それを積み重ねてどこまで自分を上げていかなくてはいけないのか。その設計ができていなかったところに問題があったと思っています。「勉強とは何か」というところが、全然できていなかったと思います。

浪人2年目からメディカルラボに通った理由

──浪人2年目からメディカルラボに通われたそうですね。選んだ理由を教えてください。

 

個別指導だったからです。集団のなかにいると埋もれてしまうし、結局、自分の何がダメなのかがよくわかっていませんでした。大勢のなかにいると、ある意味では逃げることもできるし、自分が埋もれてしまえる。だから、個別指導のほうが自分には合っているだろうと思いました。

 

──入校してから、勉強への向き合い方は変わりましたか。

 

変わりました。とにかく最初はがむしゃらにやりました。そのなかで、「どこをどんなふうに積み上げれば、ちゃんと上に登っていけるのか」が身についた感じです。

 

──正しい努力の仕方がわかったということですね。個別指導や学習計画のサポートも大きかったのでしょうか。

 

「これをここまでにやる」という計画を組み立ててもらったので、それを完璧にしていく。そのなかで、「こうすればいいんだな」ということがわかっていきました。それに個別授業なので、私に合わせて学習プランを立ててもらえたというのは大きかったと思います。

 

──メディカルラボに通っていた時期で、特に印象に残っていることはありますか。

 

あの時期が、一番努力したタイミングだったと思います。あとは、勉強に集中しやすい環境だったことですね。一緒にいる人たちも、黙々と自分のことをやるタイプの人たちでした。「もう疲れたから遊びに行こうぜ」というような雰囲気はまったくなかった。

 

そういう環境とは切り離して、自分を勉強に向かわせることができたのは良かったと思います。

 

──講師についてはいかがでしたか。

 

先生方は皆さん懐が広く、説明もわかりやすかったです。私がどういう人間なのか、どういうふうに指導したら理解しやすいのかというところまで見てもらえていました。 性格だけでなく、成績面でも、どこが苦手なのか、どこが伸びやすいのかまで把握してもらえていたのがありがたかったです。

患者さんと「途中でさようなら」にならない診療科

──乳腺外科を専門に選んだ理由を教えてください。

 

結局は、患者さんとどう接したいかという、診療スタイルの問題だったと思います。

 

がん診療はある程度プロトコルが決まっていて、診断がついてからいろいろな治療プランがあります。患者さんと相談しながら、患者さんもこちらも「これでいこうね」と納得しながら進んでいける診療科だと思ったんです。患者さんと接するうえで、そのスタイルのほうが自分に合っていると思いました。

 

──患者さんと伴走していく感じなのですね。

 

乳腺外科の場合は、初診から本当にターミナル(終末期)まで患者さんと一緒にいることになります。特に私の勤務先ではそうですね。病院によっては、手術だけ外科が担当して、その後は内科で診るところもあると思います。

 

でも私は、患者さんと途中で「さようなら」とはならずに、最後まで一緒に走れる診療科がいいなと思ったんです。そういうところも含めて、患者さんと長い間一緒に走れる診療科だと思って、乳腺外科を選びました。

 

──治療そのものだけでなく、患者さんとの関係にもやりがいを感じるのでしょうか。

 

乳がん診療では、病気を治すことだけでなく、そのうえで、いかに患者さんが自分の生活を送れるかというところも大切にしています。もちろん、難しい病状の方をうまくコントロールしたり、治療したりすることも大事です。

 

でも、患者さんが今に満足していて、自分の生活を送れている。「この治療を受けていてよかった」「診断してもらえてよかった」と思ってもらえるのであれば、良い方向に一緒に進めているんだなと感じます。一方で、あくまでその人にはその人自身の人生を、乳がんだけにとらわれずに生きてほしいと思っています。

女性医師が働き続けるために必要なこと

──ライフステージの変化に合わせて働き方を調整しながら、長く働き続けられる環境は整っていると感じますか。

 

比較的、働きやすいと思います。実際に今、産休から復帰した女性医師がいますが、勤務時間や業務の分担についても、その人の状況に合わせて柔軟に調整しています。

 

たとえば、育児の都合で勤務時間を短くしたり、早めに帰宅したりする必要がある場合も、周囲が受け入れる雰囲気があります。制度面だけでなく、職場全体としても、それぞれの事情に合わせて働き方を調整しやすい環境だと感じますね。

 

──今後、さらに改善されるとよいと思うことはありますか。

 

一番大きいのは、人手不足だと思います。産休や育休、時短勤務などの制度があっても、現場に十分な人数がいなければ、実際には休みを取りづらかったり、周囲の負担が大きくなったりします。

 

逆に、代わりに対応できる人が十分にいれば、勤務時間や業務分担も調整しやすくなります。制度を整えることに加えて、まずは人員に余裕があることが、働きやすさにつながるのではないかと思います。

受験勉強は「医師になってからの訓練」

──最後に、これから医学部を目指す受験生へメッセージをお願いします。

 

医師になると、ずっと勉強が続きます。受験勉強も、そのための訓練だと思えばいいのかなと思います。結局は自分との戦いなので、自分に負けないでほしいですね。

 

受験生の頃は、やりたくない勉強もありましたが、「これをこなせば点が取れる」「できることが増えれば、合格に近づいている」と道筋が見えやすかったと思います。実際に点数が上がれば、自分が少しずつ登っていけている感覚もありました。

 

一方、医師になった今は、自分が確実に成長しているかどうかは、患者さんを通してしかわからない部分があります。そういう意味では今のほうが難しさもありますが、楽しいのは間違いなく今ですね。

 

ただ、浪人していた時期は、「自分はダメなんだ」と自分にレッテルを貼り続けているような感覚があって、それがすごくつらかったです。勉強そのものより、そちらのほうがつらかったかもしれません。だからこそ、受験生には、やるべきことを一つずつ積み重ねていってほしいと思います。

 

 

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