60歳で定年を迎えたあと、会社の再雇用を選ばず、退職金と貯蓄を取り崩しながら年金生活までつなぐ――。そんな老後設計に、いま新たな選択肢が加わっています。短時間・単発で働く「スポットワーク」です。月8万円ほどの収入でも、5年間続ければ老後資金には大きな差が生まれます。60歳以降の「ほどほどに働く」という選択について、CFPの松田聡子氏が解説します。
「思った以上のペースで減っていくな…」〈退職金1,900万円〉で定年退職した60歳男性、65歳までの生活費を守るために決めた“再就職以外の選択肢”【CFPの助言】
無理なく月8万円を稼ぎ、資産を守るためのポイント【FPからのアドバイス】
信太郎さんのように月7万~8万円をスポットワークで稼ぐことは、現実的な選択といえます。
東京都の最低賃金は、2026年10月1日から時給1,280円になります。仮に最低賃金と同水準で1日5時間・週3日働くとすると、1か月を平均約4.33週として月収は約8万3,000円です。よって、仕事が安定して見つかる地域であれば、月7万~8万円という水準そのものは無理のある想定ではありません。
ただし、スポットワークは短時間・単発の雇用です。希望する日時や場所に毎回仕事があるとは限りません。特に求人の少ない地域では、都市部と同じように働けるとは限らない点には注意が必要です。厚生労働省もスポットワークについて、就業場所や仕事内容、労働時間、賃金などの労働条件を確認するよう呼びかけています。
また、定年退職後に雇用保険の基本手当、いわゆる失業給付を受けながらスポットワークをする場合にはルールを確認しておきましょう。
手続き後7日間の待機期間中は働かないようにする
雇用保険に20年以上加入して定年退職した場合、失業給付(基本手当)は150日分で、自己都合退職のような給付制限は原則かかりません。ただし、手続き後7日間の待期期間中は働かないようにしましょう。受給中に1日4時間以上働いた日は「就労」となり、その日の分は後ろに繰り越されます。4時間未満なら「内職・手伝い」の扱いで、収入額によっては減額されます。どちらの場合も、働いた日は必ず認定日に申告しましょう。
社会保険の任意継続と国民健康保険の保険料を比較しておく
退職後の健康保険は、会社の健康保険を最長2年続ける「任意継続」と、国民健康保険から選べます。任意継続は保険料が全額自己負担ですが、扶養家族がいても保険料は変わりません。国民健康保険は前年の所得と世帯人数で保険料が決まります。任意継続の申し込みは退職日の翌日から20日以内のため、退職前に両方の保険料を比べておきましょう。
厚生年金に加入して65歳以降の年金を増やしたい場合は、週20時間以上の派遣やパートを選ぶ手もあります。勤務先の規模などの条件を満たせば、厚生年金と健康保険に加入できます。
信太郎さんは調理補助としてときどき入っていた飲食店から「仕事が丁寧で助かる」と評価され、数か月後に週3日の長期パート雇用を打診されました。前述の調査でも、シニア・プレシニア世代の43.7%が勤務先から長期就業を打診された経験を持っています。スポットワークを「職場の相性を確かめるお試し期間」として活用した信太郎さんは、65歳以降も見据えた安定した生活基盤を確立することに成功しました。
松田聡子
CFP®
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