子どもが独立し、「これからは自分のために生きたい」と考え始めた58歳の女性。離婚したママ友の姿に心を動かされ、自身も離婚を考えます。ところが、年金事務所で分割後の年金見込額を確認し、FPに相談したことで、「離婚すれば自由になれる」と考えていた彼女の気持ちに変化が生まれます。佐藤恵美さん(仮名・58歳)の事例をもとに、FPの三原由紀氏が解説します。
「私も離婚しようかな」自由になった友人をうらやんでいた58歳女性が、結婚生活を続けることにした〈離婚後の年金額〉
「拒絶感があるかどうか」――数字の先にあった本当の分岐点
けれどFPは、そこで話を終わらせませんでした。
「数字だけを見れば、結婚生活を続けたほうが経済的には安心です。でも、お金のためだけに一緒にいる必要はありません。佐藤さんが変えたいのは、ご主人と一緒にいることそのものなのか。それとも、これまでの夫婦の暮らし方なのか。そこは分けて考えてみてもいいかもしれません」
恵美さんはそこで初めて、自分のなかに夫への「拒絶感」があるのかを考えました。友人は夫と一緒にいることそのものが苦痛で離婚を選びましたが、自分は夫と同じ家にいること自体が耐えられないわけではありません。ただ、もう「妻は家のことをして当然」という暮らしを、この先も続けたくなかったのです。
「私が変えたいのは、夫との関係そのものではなく、これまでの暮らし方だったのかもしれない」
そう気づいた恵美さんは、離婚は選ばず、まず自分の生活を少しずつ変えてみることにしました。休日は自分の予定を優先し、食事も週に一度はそれぞれで済ませる。パートの働き方も、これからを見据えて見直すことにしました。
「最近、どうしたんだ?」と戸惑う夫に、恵美さんはこう答えました。
「子どもも独立したでしょう。私もこれから、自分の時間をもう少し大事にしたいの」
夫がすぐに理解したわけではありませんが、恵美さんは以前のように夫の反応を気にして、自分の希望を引っ込めることはしませんでした。
恵美さんの友人は、離婚することで「自分で決める生活」を選びました。恵美さんは、「結婚を続けながら自分の暮らしを選び直すこと」を選びました。どちらが正解という話ではありません。
離婚後のお金を具体的に確認することは、「離婚できるか、できないか」を判定するためだけではありません。あなたが今の暮らしに違和感を覚えているとしたら、それは夫婦関係そのものへの拒絶感でしょうか。それとも、長年当たり前だと思ってきた暮らし方への違和感でしょうか。年金や生活費を一度数字にしてみることで、「お金が不安だから」と脇に置いていた自分の気持ちも、少し見えやすくなるかもしれません。
三原 由紀
プレ定年専門FP®
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