「老後の安心のため」と退職金で投資を始めたものの、相場の変動に不安が募り、不眠や体調不良に陥ってしまうケースは少なくありません。今回は、新NISAをきっかけに強いストレスを抱えた60代男性の事例を通して、定年後の資産運用で後悔しないための「自分に適したリスクとの向き合い方」を紐解きます。
「銀行が新NISAを勧めてくれたから」…退職金2,000万円で投資デビューの60歳元会社員。夜も眠れず、胃痛に悩まされる日々 ※写真はイメージです/PIXTA

定年をきっかけに投資を始めた60歳

「投資なんて、自分には関係ないと思っていました。でも、銀行が新NISAを勧めてくるので……」

 

東京都内に住む山本浩二さん(60歳・仮名)。中堅企業で35年、60歳で定年退職しました。退職金は2,000万円弱。同期のほとんどが定年以降も再雇用で働くような状況下、山本さんも再雇用を希望しました。

 

定年後の給与は月25万円。手取りにすると20万円ほどです。「新卒よりも少ないな」と苦笑する水準ではあるものの、5年間は絶対に働くつもりだといいます。

 

「年金はもっと少ない。今から貯金を減らすわけにはいかない」

 

65歳から受け取れる年金は想定月17万円。手取りにすると15万円強といったところ。60歳から65歳まで厚生年金に加入していれば、月5,000円程度は増える算段です。さらに2歳下の妻の年金給付も始まれば、夫婦で月26万円、手取りで月23万円程度を受け取れるというシミュレーション。

 

老後の生活がまだまだ不透明ななか、定年退職で手にした退職金は、まさに“お守り”といったところ。そんなとき、地元の銀行の掲示板で目にしたのは、退職金の運用についてのポスターでした。

 

「退職金は預金しておけばいいと思っていました。ただ『退職金を運用して安心の老後を』というポスターを目にして、興味を持ったんです」

 

早速、話を聞くことにした山本さん。銀行の担当者からは「新NISAなら運用益が非課税になります」と説明され、「ただ預けておくよりも、運用したほうが今はいい」と促されたといいます。

 

金融庁によると、2025年12月末のNISA口座数は2,820万6,434口座。60歳代は約418万口座、70歳代は約308万口座、80歳代以上は約159万口座で、60歳代以上を合わせると全体の31.4%を占めます。NISAは現役世代だけの制度ではありません。

 

山本さんも銀行との相談を重ね、退職金2,000万円のうち半分を普通預金に残し、残る1,000万円については、NISAを中心に運用することにしたのです。