※写真はイメージです/PIXTA
電話で「大丈夫」と答えていた母
「お金、足りてる?」
会社員の藤井健介さん(仮名・50歳)。週に1回、実家で暮らす母・聡子さん(仮名・72歳)に電話するたび、そう尋ねることがお決まりでした。
両親が離婚したのは、健介さんがまだ小学生のとき。父は家を出て、それ以来、聡子さんは女手ひとつで健介さんを育て上げました。
「母にはいろいろと迷惑をかけました。だから、もう苦労してほしくないんです」
聡子さんの年金は月12万円ほど。持ち家のため、現在は大きな負債はありません。お金のかかる趣味があるわけでもないので、月12万円で生活はできるでしょう。ただ十分といえる水準ではないことは、健介さん自身もわかっていました。
「私達ですら、物価高を前に、毎日のランチ代をケチるほどじゃないですか。年金だけで暮らしていけるとは思えないんですよね」
母の言う「大丈夫」という言葉の裏には、高齢者世帯の厳しい経済実態が隠されているのかもしれません。
厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯のうち聡子さんの年金収入に近い所得「100万〜150万円」の世帯は高齢者世帯全体の約10.6%(3,441世帯中364世帯)を占めており、所得200万円未満の世帯は全体の3割以上にのぼります。
また、同調査では全世帯のうち、別居している親への仕送りを行っている世帯はわずか1.99%に留まり、子どもに経済的負担や心配をかけまいと無理をしてでも「大丈夫」と気丈に振る舞う親世代の姿が浮き彫りとなっています。
とはいえ、聡子さんが「大丈夫」と言うのなら、それ以上は聞かないようにしていました。
「母も、子どもにしつこく聞かれたらイヤになるでしょう。『お金、足りてる?』とまず聞くのは、挨拶みたいなものです」
せめて年に2、3度帰省をするタイミングで、無理やりお金を置いていく――健介さんができる、親孝行の押し付けでした。