「無職だから暇でしょ?」きょうだいの言い分

兄(52歳、会社員、高校生の子2人)も妹(47歳、末っ子、パート勤務、中学生の子1人)も子育てを理由に、それぞれ介護への関与を避けました。

「康正は無職だから暇でしょ?」

電話越しに兄からそう言われたとき、杉本さんは言葉を失いました。FIREは時間の使い方を自分で選ぶための決断だったはずなのに、いつの間にか「暇な人」という扱いに変わっていたのです。しかし、時間があるのは事実のため、言い返すことができません。

「お父さんの遺産はあげるから」

妹からはそう持ちかけられました。けれど杉本さんにとって、それは自分の資産のおよそ20分の1にしかならず、介護を一手に引き受ける動機にはなりませんでした。

父の遺産は自宅2,500万円、預貯金800万円で計3,300万円。母が存命なので、子の法定相続分は残り半分を3人で均等に分けた6分の1、約550万円にとどまるという計算です。

なお、被相続人の介護などに特別な貢献をした相続人には、「寄与分」(民法904条の2)が認められる場合もあります。ただし、介護をしたからといって当然に認められるものではなく、個別の事情を踏まえて判断されます(注1)。

「せっかくFIREしても、意味なかったな……」

杉本さんは、そう漏らしました。