資産1億円超を築き、50歳でFIREを果たした杉本さん(仮名)。海外へ国内へ、自由な日々を満喫していたはずが、一転、本腰を入れてハローワークに通うことに。事の始まりは、「父が倒れた」という電話と、きょうだいからの「無職だから暇でしょ?」のひと言でした。FIREに必要なのは“お金”だけではない――その理由を、FPの青山創星氏が解説します。
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「だって無職でヒマでしょ?」…資産1億円超え・念願のFIREを果たした50歳会社員。国内外へ旅行・自由を謳歌していたが、わずか数ヵ月で“ハローワークへ駆け込んだ”ワケ【FPの解説】
「無職だから暇でしょ?」きょうだいの言い分
兄(52歳、会社員、高校生の子2人)も妹(47歳、末っ子、パート勤務、中学生の子1人)も子育てを理由に、それぞれ介護への関与を避けました。
「康正は無職だから暇でしょ?」
電話越しに兄からそう言われたとき、杉本さんは言葉を失いました。FIREは時間の使い方を自分で選ぶための決断だったはずなのに、いつの間にか「暇な人」という扱いに変わっていたのです。しかし、時間があるのは事実のため、言い返すことができません。
「お父さんの遺産はあげるから」
妹からはそう持ちかけられました。けれど杉本さんにとって、それは自分の資産のおよそ20分の1にしかならず、介護を一手に引き受ける動機にはなりませんでした。
父の遺産は自宅2,500万円、預貯金800万円で計3,300万円。母が存命なので、子の法定相続分は残り半分を3人で均等に分けた6分の1、約550万円にとどまるという計算です。
なお、被相続人の介護などに特別な貢献をした相続人には、「寄与分」(民法904条の2)が認められる場合もあります。ただし、介護をしたからといって当然に認められるものではなく、個別の事情を踏まえて判断されます(注1)。
「せっかくFIREしても、意味なかったな……」
杉本さんは、そう漏らしました。