大手証券会社のデータが証明する「NISA継続率の高さ」

SNSやメディアでは「長期投資は難しく、9割が途中でやめて脱落する」といった過激な言説が飛び交っていますが、公的な統計や実態調査に明確な根拠はありません。

2024年の新NISA開始後における大手証券会社7社をベースとした調査データによると、NISA口座における継続保有率は86.1%に達しています。さらに、日本証券業協会の調査においても、購入後に1銘柄も売却していない人の割合は79.5%を占めています。

これらの数字が示す通り、投資信託を購入した人たちのうち、実に約8割から9割近くが、脱落することなく着実に運用を継続しているのが実態です。

「平均保有期間3年未満」という統計データの落とし穴

これほど多くの人が投資を継続している事実があるにもかかわらず、「投資信託の平均保有期間は3年未満であり、長期投資を続けるのは困難である」というデータが金融庁のレポートをはじめ、様々なメディアで紹介されています。

しかし、この公表されている統計自体が、投資家の実際の保有状況を正しく反映していません。

そもそも、この数値を発表している投資信託協会は、一人ひとりの投資家が実際に何年間保有していたかを個別に入力して集計しているわけではありません。その計算式は、以下のような極めて大ざっぱな算出方法に基づいています。

平均残高(全体の運用残高)÷1年間で解約された額(解約額)

この計算式を実際の数値に当てはめると、明らかな矛盾が生じることになります。たとえば、純資産総額が1,000億円のファンドがあり、年間で200億円分が売却されたとします。この場合、1,000億を200億で割った結果、平均保有期間は「5年」と算出されます。

計算自体は間違いではないものの、これが本当に「個々の投資家が保有している期間の平均値」であるかというと、決してそうではありません。

さらに致命的なのは、設定されてから1年しか経過していない新しい人気ファンドを想定した場合です。運用が始まってから1年しか経っていないため、物理的にすべての投資家が最長でも1年未満しかその商品を保有できません。

しかし、このファンドの平均残高が1,000億円あり、この1年間の解約額が100億円だったとします。この状況を計算式に当てはめると「1,000億円÷100億円=10」となり、存在して1年しか経っていない商品であるにもかかわらず「平均保有期間10年」という“あり得ない数値”が弾き出されてしまいます。

実際に、ファンドそのものの設定期間よりも計算上の平均保有期間のほうが長くなるという異常値を示した投資信託は、過去の集計(2022年3月末)において1,100本以上確認されています。

このように、メディアで取り上げられる「平均保有期間3年未満」という数字は、単なる計算手法上の不備に起因する不正確なデータであり、投資家が次々と脱落しているという証拠にはなりません。

「長期投資は困難」と不安を煽ることで利益を得る人々の思惑

では、なぜ明確な根拠が存在しないにもかかわらず、「長期投資は難しい」「ほとんどの人が途中でやめる」という言説が執拗に繰り返されるのでしょうか。そこには、情報提供者側の都合やビジネス上の思惑が存在します。

情報を配信する立場からすると「9割が脱落する」とセンセーショナルに危機感を煽った方が、インパクトが強く、世間の注目を集めやすいという事実があります。

また、個人投資家に自分自身の判断で投資を継続されては困る、金融機関側の都合も関係しています。「インデックスを自分で購入して長期投資し続けるのは、値動き(ボラティリティ)が激しく、自身のメンタルが持たないので無理である」という認識を植え付けることで、別の投資商品を提案することが可能になります。

具体的には、手数料の高いラップファンドやバランスファンドといった、人の手が入った自社の商品を契約させたい保険会社や証券会社にとって、「長期投資は自分では継続できない」というストーリーは極めて好都合なのです。