北村家が踏み出した、次の一歩

「約1億4,000万円という数字を見たとき、正直、安心したんです。でも、お金があることと使えることは、まったく別の話だったんですね」

直樹さんはその日のうちに、父のかかりつけ医に相談することにしました。まずは現在の父の状態を確認し、そのうえで家族信託などの契約ができる状態なのか、専門家にも相談してみるつもりです。

北村家のようなケースは、誰にでも起こりえます。認知症と軽度認知障害を合わせた高齢者の有病率は、2022年27.8%で、2040年には30.5%に達するとの試算もあります(注3)。北村家では、1億円を超える資産があったものの、それが「安心の始まり」ではありませんでした。資産凍結は備えがあれば軽くできる可能性があります。「うちは大丈夫」と思わず、親が自分の言葉で思いを語れるうちに資産の管理方法を話し合っておくこと――。

北村家が突きつけられた現実は、これから超高齢化社会を迎えるすべての家族への大切な警鐘と言えます。

注1:全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)」

注2:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況―令和6年1月〜12月―」

注3:令和5年度 老人保健事業推進費等補助金「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」(研究代表者 九州大学 二宮利治)

青山創星
ファイナンシャル・プランナー