お盆が近づいてきた8月某日。大垣俊彦さん(仮名・69歳)は、3年ぶりに孫娘に会えることを楽しみにしていました。しかし、人見知りもあるのか、なかなか心を開いてもらえません。何とかして孫娘との距離を縮めたい俊彦さんが考えたのは、「お盆玉を奮発すること」でした。
「お金をあげないと孫の笑顔すら見れないなんて、虚しいな…」長男家族が帰ったお盆最終日、69歳男性がそれでもお盆玉を渡し続ける理由
69歳男性、3年ぶりに孫娘と再会
福井県に住む大垣俊彦さん(仮名・69歳)は、毎年8月に入ると家の大掃除をします。3年前に妻を亡くした俊彦さんにとって、2階建ての一軒家を一人ですみずみまで掃除するのはかなりの重労働。それでも掃除を続けるのは、お盆に長男家族が帰省してくるからです。
「りーちゃん(孫)に最後に会ったのはまだ1年生のときだもんなあ。じぃじのこと、覚えてるかな」
俊彦さんの長男・正樹さん(仮名・45歳)は、妻の美咲さん(仮名・39歳)、娘のりおんちゃん(小学4年生)の3人家族。正樹さんの仕事の関係で山梨県に住んでいます。一人暮らしの俊彦さんを心配して、正樹さんはたびたび様子を見に来てくれていました。しかし、美咲さんとりおんちゃんに会うのは3年ぶりのため、俊彦さんは緊張していました。
とうとう、正樹さん家族が帰省する日を迎えました。庭先に停まったミニバンの運転席から、長男の正樹さんが出てきます。正樹さんの妻・美咲さんもあとに続き、俊彦さんに「お義父さん、ご無沙汰しております」と和やかにあいさつしました。
「久しぶりだねえ。元気そうでよかったよ。あれ、りーちゃんは?」
「なんか恥ずかしがっちゃってて。ほら、早く出てこないと置いてくよ」
正樹さんが呼びかけると、車の中からもぞもぞとりおんちゃんが出てきました。
「りーちゃん、大きくなったねぇ。何歳になったの?」
俊彦さんは腰を落としながら優しく話しかけましたが、りおんちゃんは目を合わせようとしません。うつむきながら、「……9歳」とだけ答えてくれました。
お盆玉をあげたときだけ、とびきりの笑顔
久しぶりだから人見知りしてるんだろうな、と思った俊彦さんでしたが、その後もりおんちゃんは俊彦さんと打ち解ける気配がありません。4人で食卓を囲んだとき、正樹さんが「じぃじの隣に座る?」と促しましたが、りおんちゃんは「いい」と言って俊彦さんから離れた席に座りました。食事中も俊彦さんはりおんちゃんに積極的に話しかけますが、何を聞いても「うん」「別に、普通」とそっけない返事が返ってきます。
翌日に4人でファミリーレストランへ行ったときも、りおんちゃんはつまらなさそうに携帯型ゲーム機をいじったり、正樹さんと卓上の間違い探しに夢中になったりしていました。
「お義父さん、本当にすみません……」
美咲さんが申し訳なさそうに謝ります。
「全然気にしてないよ。りーちゃんもお姉さんになったし、じぃじと話しても楽しくないよね(笑)」
気丈に明るくふるまう俊彦さんでしたが、内心では自分の言葉に傷ついていました。
3日目の最終日。せめてりおんちゃんが喜ぶことをしてあげたいと思い、俊彦さんはお盆玉を奮発することにしました。俊彦さんからお盆玉を受け取ったりおんちゃんは、中身を見て「えっ、こんなにいいの……!?」と思わず声を上げます。
「うん。これまで会えなかった3年分ってことでね」と返すと、「きゃー!」と飛び跳ねながら喜びました。
「じぃじ、ありがとう!!」
2泊3日の帰省期間中、りおんちゃんが初めて俊彦さんに笑いかけてくれた瞬間でした。
ソニー損保「2026年 お盆の帰省に関する調査」によると、子ども一人あたりのお盆玉の平均額は9,977円。これは2019年の調査と同水準で、物価が上がってもお盆玉の金額は大きく変わらないことがわかります。俊彦さんは、平均の約2倍の金額である2万円をお盆玉として包んだのです。